脂質を構成する多価不飽和脂肪酸(PUFA)は酸化を受けやすく、食品を高温下や光照射下などで保管すると、食品中脂質の酸化が急激に進行し、食中毒の原因となる二次酸化生成物ができる。これまで、二次酸化生成物についてはよく理解されてきたが、PUFA過酸化物自体を精査した研究は少なく、PUFA過酸化物を摂取した際の人体への影響は不明である。 よって、各種PUFA過酸化物の体内動態を視覚化することを研究の目的とし、安定同位体ラベル化PUFA過酸化物を合成し、これを投与したマウスの各種臓器・組織を質量分析計で定性・定量的に確認することで、投与されたPUFA過酸化物の体内動態を追跡することとした。 本研究では、PUFAのうち、リノール酸過酸化物に焦点を当て、その体内動態追跡を目指した。まず、安定同位体でラベル化したリノール酸を合成した。続いて、安定同位体ラベル化リノール酸過酸化物を熱酸化によって合成を試みたが、合成できなかったため、光酸化によって合成した。これを、マウスに投与後、呼気を回収し、リノール酸過酸化物の体燃焼性を精査した。その結果、未酸化のリノール酸に比べて、リノール酸過酸化物は体内で燃焼されやすいことが分かった。これは、リノール酸過酸化物が胃で分解を受け、中鎖脂肪酸や二次酸化物として代謝されている可能性が示唆された。
|