研究課題/領域番号 |
19K20184
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
酒寄 信幸 福島県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (30747457)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多価不飽和脂肪酸 / 不安 |
研究実績の概要 |
マウスにコントロール飼料または高n-6/低n-3飼料を投与し、成体に達した後、中脳腹側被蓋野におけるドパミン作動性ニューロンの投射先である側坐核における細胞外ドパミン濃度を、マイクロダイアリシス法および高速液体クロマトグラフィーにより定量した。これまでに短期的な実験系におけるドパミン濃度の測定解析は実施していたが、ここでは30分間にわたってドパミン濃度を測定し続ける実験を行った。本実験パラダイムにおいても、細胞外ドパミン濃度は高n-6/低n-3飼料投与群において増加していることが分かり、高n-6/低n-3飼料投与群における不安行動の増加がドパミン放出量の増加によって生じたことが支持された。 次に、ドパミンの過剰放出につながる原因を明らかにするため、ドパミン作動性ニューロンの発生過程に着目した。不安行動に関与することが報告されている中脳腹側被蓋野paranigral nucleusにおけるドパミン作動性ニューロンは、胎生11.5-13.5日にかけて生み出されることをすでに見出しているため、本年度はまず胎生11.5日に産生されるドパミン作動性ニューロン数の解析を行った。胎生11.5日において、コントロール飼料または高n-6/低n-3飼料を投与した妊娠マウスに5-エチニル-2'-デオキシウリジン(EdU)を腹腔注射し、産生されるドパミン作動性ニューロンを標識し、胎生14.5日の子の中脳腹側被蓋野におけるドパミン作動性ニューロンを組織学的に評価した。すると、EdU標識ドパミン作動性ニューロン数が高n-6/低n-3飼料投与群において増加していることが分かった。以上から、胎生11.5日におけるドパミン作動性ニューロンの過剰産生が、将来の不安行動を増加させる原因となった可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中脳腹側被蓋野におけるドパミン作動性ニューロンが過剰に産生される発生時期の特定を行うことができた。また、側坐核medial shellにおける細胞外ドパミン濃度が高n-6/低n-3飼料投与群において安定的に増加していることを確かめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、EdUによる標識を胎生12.5-13.5日においても行い、中脳腹側被蓋野におけるドパミン作動性ニューロン産生の解析を行う。また、ドパミン作動性ニューロン産生の増加を起こす脂質分子を同定するため、胎子脳におけるリピドミクス解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの産子数が少なく、飼料の購入量を削減することができたため。発生解析に必要な抗体の購入費用に充てる。
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