マウスにコントロール飼料または高n-6/低n-3飼料を投与し、成体に達した後、側坐核における細胞外ドパミン濃度を定量したところ、高n-6/低n-3飼料投与群において増加していた。これにより、高n-6/低n-3飼料投与群における不安様行動の増加がドパミン放出量の増加によって生じた可能性が示された。 次に、ドパミンの過剰放出につながる原因を明らかにするため、ドパミン作動性ニューロンの発生過程に着目した。中脳ドパミン作動性ニューロンは主に胎生11.5-12.5日に生み出される。そこで、胎生11.5日または胎生12.5日において、コントロール飼料または高n-6/低n-3飼料を投与した妊娠マウスに5-エチニル-2'-デオキシウリジン(EdU)を腹腔内注射し、産生されるドパミン作動性ニューロンを標識し、胎生14.5日における中脳ドパミン作動性ニューロンを組織学的に評価した。すると、胎生11.5日においてEdU標識されたドパミン作動性ニューロン数が胎生14.5日の高n-6/低n-3飼料投与群において増加していることが分かった。以上から、胎生11.5日におけるドパミン作動性ニューロンの過剰産生が将来の不安様行動を増加させる原因となった可能性が示された。 また、高n-6/低n-3飼料を投与された妊娠マウスの胎仔における全脳の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、コントロール飼料を投与された妊娠マウスの胎仔全脳に比して、総脂肪酸に対するn-6系ドコサペンタエン酸の割合の増加およびドコサヘキサエン酸の割合の減少がみられた。これは、高n-6/低n-3飼料を胎仔から成体まで継続投与した群の全脳における脂肪酸組成と一致する結果である。
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