本研究は、若年成人の習慣的朝食欠食者が最初に目指すべき朝食の量的基準を明らかにすることを目的として実施した。 まず2019年度は実態把握のため横断調査を実施し、朝食エネルギー摂取量と1日の身体活動量、栄養素摂取量の関連を検討した。その結果、推定エネルギー必要量(EER)に占める朝食の割合は17.1 %であった。朝食欠食日の身体活動量は朝食喫食日に比し有意に少なく、朝食エネルギー摂取量が少なくても多くても、身体活動量が減少する可能性が示唆された。量的基準として、240 kcal(EERの約12 %)以上の朝食摂取が身体活動量低下の予防に有効と考えられたため、2020年度は、被験者に0-720 kcalの数種の朝食を提供し、検討を重ねた。感染対策のため研究内容に制約が生じたものの、量的基準として360 kcal(EERの約18 %)以上の朝食摂取が望ましいと考えられた。文献的には理想的な朝食エネルギー摂取量はEERの20-35 %と考えられ、2021年度は、朝食欠食習慣のある若年成人にEERの20 %を満たす朝食摂取を促す栄養指導介入を行った。しかし、朝食摂取習慣の無い対象者にとってEER20 %は量的に負担が大きく、朝食摂取の達成率、身体活動量、栄養素摂取量には大きな個人差が見られた。そこで2022年度は、少量朝食(EERの10 %)および分割朝食(EER20%を2回に分けて摂取する)を提供してその影響を調査したところ、EER20%分割朝食の摂取は、身体活動量には有意差を認めなかったものの、1回でEER20%を満たす朝食を摂取した場合と遜色なく、1日の栄養素摂取量を充足させる有効な手段となり得ることが明らかとなった。 本研究全体を通じて、朝食の量的基準の下限値を決定する一根拠が得られ、朝食の分割摂取の有用性が示されたことにより、若年成人の栄養改善に向けた有用な知見が得られた。
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