【背景】低出生体重児は在胎期の体質変化が原因となり生活習慣病を発症するリスクが高いが、低出生体重-糖尿病発症の病態は適切な動物モデルがなく十分に解明されていない。 【目的】動物実験委員会の承認のもと、子宮内虚血マウスが非肥満及び肥満型高血糖発症モデルとなり得るかを検証する。 【方法】妊娠16.5日のマウスで両側子宮動脈を15分間血流遮断した虚血(I)群(n=12)と、開閉腹のみ行ったコントロール(C)群(n=14)に分類した。出生した新生仔マウスを4週齢で離乳し普通食(I群n=7、C群n=9)と高脂肪食(I群n=5、C群n=5)にさらに分け飼育した。体重推移と8週齢時の体組成、血糖値を比較した。 【結果】出生体重の平均値はI群5.0g、C群6.7gとI群で有意に低かった(p<0.01)。成獣期(雌)の体重、血糖値、脂肪重量、除脂肪重量は、普通食ではI群が平均35.0 g、166 mg/dl、17.8 g、17.2 g、C群が40.0 g、79 mg/dl、18.2g、22.3 gであり、I群はC群と比較して除脂肪重量が軽く、血糖値が有意に高かった(p<0.01)。高脂肪食ではI群が平均52.5 g、213 mg/dl、35.4 g、16.9 g、C群が平均42.8 g、141 mg/dl、29.6 g、15.7 gであり、I群はC群と比べ体重が重く、血糖値が有意に高かった(p<0.05)。8週齢でIRIは有意差を認めなかったが、HOMA-Rは虚血群で非虚血群よりも高い傾向であった(p=0.06)。虚血群の7頭中3頭でHOMA-Rが正常値の1.6より高く、非虚血群は全例でHOMA-Rは1.6未満であった。 【結論】子宮内虚血によって低出生体重仔が産まれた。離乳後普通食で、成獣期に低体重にも関わらず高血糖を発症し、高脂肪食では肥満と著明な高血糖を発症した(特願2020-116354)。
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