研究課題/領域番号 |
19K20196
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
片岡 孝介 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (60822260)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CB1受容体 / 内在性カンナビノイド系 / ミトコンドリア / オートファジー / マイトファジー / 加齢性記憶障害 / 海馬 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
内在性カンナビノイド系は、加齢に伴う記憶・学習能力の低下に関与している。内在性カンナビノイド系を構成するCB1受容体は、中枢神経系の神経細胞に多く発現しており、加齢と共に活性が低下する。さらに、CB1受容体ノックアウトマウス(CB1-KO)は、加齢に伴って急速に記憶・学習能力が低下する。一方で、CB1受容体の活性化は加齢に伴う記憶・学習能力の低下を緩和することが報告されている。これらの既往研究からCB1受容体の活性は生涯に渡る記憶・学習能力の保持に重要であると考えられているが、そのメカニズムは不明である。 ミトコンドリアは神経細胞の生存や機能維持に重要であり、ミトコンドリアの機能異常は老化の重要な特徴の一つであるのみならず、パーキンソン病などの神経変性疾患とも深く関連している。最近の研究により、CB1受容体は海馬神経細胞のミトコンドリアにも発現しており、神経細胞のエネルギー代謝に関与していることが示唆されている。本研究では、CB1受容体がミトコンドリアの品質の維持に関与するか検討した。 当該年度は、若齢期から成熟期のCB1-KOを用いて、CB1受容体や加齢がミトコンドリアの品質管理機構(ミトコンドリアオートファジーおよびミトコンドリアダイナミクス)に影響するか調べた。その結果、(1) CB1-KOは成熟期特異的にミトコンドリアオートファジー活性が低下していること、(2) 成熟期のCB1-KOではミトコンドリアの伸長性・相互接続性が顕著に増加していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度ではまず、ミトコンドリアオートファジーに重要なリン酸化ユビキチンの発現を調べたところ、CB1-KOは海馬において成熟期特異的にリン酸化ユビキチンの発現が減少していることが分かった。さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、オートファジーを起こしているミトコンドリアの頻度を解析したところ、成熟期特異的にCB1-KOがミトコンドリアオートファジーの活性が低下していることが示唆された。また、分裂と融合によって制御されるミトコンドリアの形態を、電子顕微鏡を用いて解析した。TEMおよびSEM連続断面観察(FIB/SEM)を用いて、海馬神経細胞におけるミトコンドリアの2D&3D形態を調べたところ、成熟期のCB1-KOではミトコンドリアの伸長性・相互接続性が顕著に増加していることが示唆された。以上より、CB1受容体は海馬神経細胞においてミトコンドリアの品質維持に貢献していることが明らかとなった。今後の研究では、培養細胞を用いた実験も取り入れながら、見出した現象の分子メカニズムを明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
別の組織由来の培養細胞であるが、CB1受容体がミトコンドリアの形態制御に関与しているという報告が最近報告された(Drori et al., 2019)。当該研究で見出された現象は、本研究で見出された現象と類似しており、分子メカニズムの解明を進めていく上で参考になりうる。今後は、既往研究で明らかにされたCB1受容体の下流因子の阻害剤等を用いて、CB1受容体が神経細胞においてミトコンドリアの品質を維持する分子メカニズムを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、初年度にトランスジェニックマウスを用いたin vivoマイトファジー測定の実験を行う予定だった。しかし、共同研究先のドイツの州において動物実験に対する規制が予想より遥かに厳しくなっている状況を受け、電子顕微鏡を用いたノックアウトマウスの解析に変更した。そこで、後年度に使用予定であったトランスジェニックマウス維持費用やマウス用の試薬費用の代わりに、以上の実験の準備および実施のため、翌年度分の助成金を請求した。後年度に請求する予定だった金額は減るものの、新たにボン大学の神経恒常性研究所や第二生理学研究所の協力も得ることができるようになったこともあり、当初の研究目的の遂行に問題はない。
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