研究課題/領域番号 |
19K20197
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研究機関 | 神戸松蔭女子学院大学 |
研究代表者 |
橋本 沙幸 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 講師 (90707530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | NASH / 降圧剤 / SHRSP5/Dmcr / 食事療法 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎モデルラット (SHRSP5/Dmcr) に高脂肪・高コレステロール (HFC) 飼料を与え、肝臓に線維化を発症させた後、脂質コントロールを主体とした食事療法と降圧剤投与を同時に行い、その治療効果を検討した。降圧剤は、2種類 (バルサルタンとヒドララジン) を用い、効果の違いを比較した。 HE染色を行い病理評価を行ったところ、中心静脈域においてコントロール群に比べてバルサルタン投与群では脂肪滴が小さくなっていること、ヒドララジン投与群では類洞が観察され、中心静脈付近から細胞が回復していることが確認出来た。一方、門脈域においては、バルサルタン投与群では正常細胞が多く確認されたが、ヒドララジン投与群ではコントロールに比べると回復しているが、バルサルタン投与群と比べると脂肪滴が多く見られた。これらの結果より、降圧剤の種類によって脂質の減少に違いが見られる可能性が出てきたため、脂質染色を行った。その結果、食事療法のみのコントロール群では背中側の繊維化が密ではない部位においても大脂肪滴がみられ、繊維化が密になっている腹側においては回復は見られなかった。バルサルタン投与群では、コントロール群やバルサルタン投与群と比較して、全体的に脂質が減少していることが明らかとなった。しかし、中心静脈周りには脂質が残っている部位も確認された。一方、ヒドララジン投与群では、中心静脈周りから脂質が減少していることが確認出来たが、それ以外の部位ではあまり脂質減少は見られなかった。また、類洞はバルサルタンよりヒドララジンで顕著に観察され、ヒドララジン投与によって細胞のバルーンニングが改善されたことが確認出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、降圧剤投与によって繊維化が改善されると考えていたが、脂質の減少効果が降圧剤の種類によって異なることが確認出来た。そのため、再度病理評価を行った結果、測定項目の変更が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
脂質染色を確認した結果、アンギオテンシン系を介した脂質改善効果があるバルサルタンと、中心静脈圧を減少させる効果があるヒドララジンで脂質減少に関するメカニズムが異なることが見出された。今後、脂肪滴の減少に関するメカニズムを明らかにするため、脂質代謝調節に関与する核内受容体PPARaを中心に測定を進める。さらに、これまでの病理評価を中心に論文にまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想していた実験結果と異なったため、追加で測定する項目が増えた。測定に必要な消耗品を次年度は購入する予定である。また、全ての実験結果が揃っていないため、昨年度は論文執筆までに至らなかった。論文執筆後は英文校正費用などを次年度予算で使用する予定である。
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