非アルコール性脂肪性肝炎モデルラット (SHRSP5/Dmcr) に高脂肪・高コレステロール飼料を与え、肝臓に線維化を発症させた後、脂質コントロールを主体とした食事療法と降圧剤投与を同時に行い、その治療効果を検討した。降圧剤は2種類 (バルサルタンとヒドララジン) 用い、効果の違いを比較した。 病理評価では、コントロール群に比べてバルサルタン群で中心静脈域の脂肪滴が小さくなり、ヒドララジン群では類洞が見られ、中心静脈付近から細胞が回復した。一方、門脈域では、バルサルタン群では正常細胞が多く確認され、ヒドララジン群ではコントロール群に比べると回復しているが、バルサルタン群と比べると脂肪滴が多く見られた。この結果より、繊維化改善よりも脂質の変化が著しいため、脂質染色を行った。その結果、コントロール群では繊維化が密ではない部位 (背中側) において大脂肪滴がみられ、繊維化が密である部位 (腹側) にでは回復がみられなかった。バルサルタン群では、全体的に脂質が減少したが、中心静脈付近では脂質の残存が確認された。一方、ヒドララジン群では、中心静脈付近のみ脂質が減少していることが確認出来た。当初の予定では、どちらの降圧剤でも繊維化が改善されると考えていたが、脂質の減少効果の違いが顕著であったため、最終年度には脂質代謝関連の指標についても測定した。その結果、DGAT1は、どちらの降圧剤投与でも低下し、降圧剤投与によりトリグリセリド合成が抑制されたと推察される。一方、DGAT2は、バルサルタン群で低下したが、ヒドララジン群はコントロール群と同程度であり、脂質の減少については、ヒドララジンよりバルサルタンの方が有効であると示唆される。一方、血管新生や繊維疾患に関与するPDGFR-βはバルサルタン群よりヒドララジン群で低値を示し、繊維化改善の効果としてはヒドララジンの方が有効であると示唆される。
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