近年、歯周病菌は様々な慢性疾患と密接に関連していることが明らかとなり、健康寿命の延伸において重要視されている。また、歯周病や虫歯は、プラーク内の細菌によって引き起こされることから、予防対策としては共通点も多い。それ故、本研究では、若年成人における口腔環境の実態把握とともに、「歯及び歯茎の健康」に寄与する因子として、咀嚼力や食生活,遺伝的要因について検討を行った。特に、最終年度はこれまでに構築した研究プログラムを基に被験者数データの増加及びデータ解析に努めた。 結果として、若年成人において「歯と口の状態について気になるところがない」と回答した者は全体の15%であり、県民の実態調査結果と比べ低い割合を示した。「歯を磨く頻度」や「歯や口の清掃状況」「1年以内の歯科健康診査の受診状況」の割合は、ほぼ同じ結果を示した。口腔環境の定量結果は、高齢者と比べ概ね良好な状態を示したが、「歯の健康」に関しては違いを認めず、若年成人での課題が浮き彫りとなった。 「歯及び歯茎の健康」に寄与する因子の検討では、咀嚼力やストレスの有無において、有意な違いは認められなかった。「歯磨き時間の違い」については、3分以上にある者は未満にある者に比べ「歯茎の健康」が有意に良好であった。食習慣と口腔環境に関連があるか検討を行ったところ、ビタミン類について摂取頻度が高く有る者は「歯茎の健康」が良好にある傾向が見られた。間食の摂取頻度との間には、違いは認められなかった。遺伝的要因においては、「歯及び歯茎の健康」と関連しうる因子を見出したが、データ数が乏しい等の理由により結論には至らなかった。 以上の成果は、ライフステージ別、地域別の実態把握のみならず、食生活を通した健康寿命の延伸に向け、地域や個々に応じた口腔機能の維持・向上のための食育プログラム構築の重要な基礎資料につながる可能性をもつと考える。
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