研究課題/領域番号 |
19K20203
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
岡本 耕一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 外科学, 助教 (20783517)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シンバイオティクス / プロバイオティクス / 人工肛門閉鎖 / 萎縮腸管 / バクテリアルトランスロケーション |
研究実績の概要 |
人工肛門閉鎖術は、術後の感染性合併症発生率が消化器手術の中では比較的高く、全身性炎症反応症候群を併発する腸炎やバクテリアルトランスロケーションを疑う原因不明の敗血症が時に認められる。このような合併症の一因として、廃用性萎縮を来した双孔式人工肛門の肛門側腸管を術後に便や腸液が通過する点に着目し、肛門側腸管の免疫担当細胞の減少及び形態学的萎縮の程度とこれらの合併症との関連について、本研究代表者はこれまで報告してきた。そこで、人工肛門閉鎖術前に、人工肛門から肛門側腸管へのシンバイオティクスの直接投与による萎縮改善・免疫担当細胞賦活効果と重篤な合併症発生率の低下を目指し無作為化比較試験で検証した。 目標集積は50症例とし、無作為に割り付けたシンバイティクス投与群23症例と非投与群25症例を検討した。投与群には、術直前4日間にビオフェルミン; 3g/dayとGFO; 2袋/dayを人工肛門から肛門側腸管に投与し、主要評価項目(感染性合併症発生率、SIRS発生率、SIRS期間および術後平均在院日数)、副次的評価項目(病理組織学的な萎縮改善度、血中細菌DNA検出率等)を解析した。両群間の背景因子に差は認めなかった。主要評価項目に関しては両群間に差を認めなかった。副次的評価項目に関して、肛門側萎縮腸管の絨毛高測定による形態学的萎縮とCD45RO+ T細胞数による免疫学的萎縮を評価すると、投与群は非投与群と比較して有意な萎縮改善効果が認められた。 本研究に関する内容で、2019年日本外科学会「双孔式人工肛門の肛側腸管萎縮と閉鎖術後の感染性合併症との関連-Synbioticsによる萎縮改善のランダム化比較試験-」、2020年日本臨床栄養代謝学会(シンポジウム)「回腸双孔式人工肛門閉鎖術前の肛側腸管へのSynbiotics投与による粘膜萎縮改善効果の検討-無作為化比較試験-」で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標集積症例数に到達し、術前の生検検体および切除した人工肛門検体の評価、採取した血液検体の評価を実施中である。現在までに、シンバイオティクスが廃用性萎縮腸管に対する形態学的・免疫学的萎縮改善効果およびバクテリアルトランスロケーション予防効果を有することが明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
シンバイオティクスの腸管に対する免疫学的萎縮改善効果をより明らかにするため、腸管粘膜固有層のIgA産生細胞や成熟樹状細胞等について病理組織学的に検討する。また、萎縮改善に伴い生化学的なパラメータの変化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度行った検討は、比較的研究費の負担が少ないHE染色での病理組織学的検討と一部の免疫染色などであったが、次年度は研究費負担のさらに大きい免疫染色を主体とした検討を計画しているため、今年度の研究費を次年度に活用する方針とした。
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