研究課題/領域番号 |
19K20204
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
松川 隼也 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (00817653)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フルクトース / 代謝障害 / メタボリックシンドローム / 2型糖尿病 / 肥満 / 肝臓 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
フルクトース代謝とその障害の分子機構の解明は、フルクトースの過剰摂取と相関する肥満症やメタボリックシンドローム、フルクトース不耐症などの代謝障害の病因の理解や新たな治療法の開発に必要不可欠である。報告者は、フルクトースの代謝に重要な役割を担う酵素であるAldolaseの発現量がフルクトース摂取量の多いメタボリックシンドロームを呈する肝臓で増加することを見出した。つまり、生体は過剰に摂取したフルクトースの代謝を適切に行うためにAldolaseの発現量を増加させるが、代謝されずに蓄積した代謝産物が生体に悪影響を与えていると考えられる。本研究では、Aldolaseによるフルクトース代謝の役割とその破綻に伴う代謝障害の分子機構を生化学的、分子生物学的手法により解明することを目的とする。 本年度は、Aldolase欠損マウスを使用して、フルクトース非存在下における肥満・2型糖尿病に関連した代謝表現型や肝臓中の遺伝子や代謝産物の変化を解析した。まず、Aldolase欠損マウスの耐糖能を評価したところ、血中のインスリン値には変化がないものの耐糖能は良好になっていた。肝臓のDNAマイクロアレイを行なったところ、中性脂肪合成に関連した遺伝子群の発現増加が認められた。さらに、メタボリックシンドロームの病態におけるAldolaseの役割を明らかにするために、Aldolase欠損マウスに過食によって糖尿病・肥満の症状を呈するob/obの遺伝的背景を導入したマウス(ob/ob; Aldolase欠損マウス)を作出し、耐糖能異常や遺伝子発現への影響を評価した。その結果、ob/obの遺伝的背景によって引き起こされる血糖値の上昇や耐糖能異常はAldolase欠損により改善し、肝臓中の中性脂肪合成に関連した遺伝子群の発現増加が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主にマウスを用いた個体レベルでの評価を行った。その結果、フルクトース非存在下においてAldolase欠損マウスは血中インスリン値に変化はないものの、耐糖能が良好になることや、中性脂肪合成に関連した遺伝子群の発現増加することを見出した。さらに、糖尿病・肥満の症状を呈するob/obの遺伝的背景を導入したマウス(ob/ob; Aldolase欠損マウス)を作出し、メタボリックシンドロームの病態におけるAldolaseの関与を実証した。さらに、フルクトース存在下/非存在下でのマイクロアレイやメタボロミクス解析を行うことにより、Aldolaseとフルクトースによる代謝障害を結びつける遺伝子や代謝産物の候補を複数同定することができた。一方、これら候補因子とAldolaseの培養細胞における関連性についての研究は現在進行中ということもあり、「おおむね順調に進展している」という判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイやメタボロミクス解析で見出した、Aldolaseとフルクトースによる代謝障害を結びつける候補因子に着目した解析を行なう。主には初代培養肝細胞を使用し、どの代謝産物あるいは遺伝子がどの経路を介してどのような変化を惹起するかを明らかにしていく予定である。 また、Aldolase の発現はフルクトースの過剰摂取と相関する肥満症やメタボリックシンドロームを呈する肝臓で増加することから、フルクトースがどのようにAldolaseの発現を増加させ、どのような細胞内変化を引き起こすのか、その分子機構についてもを明らかにしていく予定である。これにより、フルクトースの過剰摂取によって引き起こされる肥満症やメタボリックシンドロームの治療のための新たな標的因子の同定を試みる。
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