フルクトース代謝とその障害の分子機構の解明は、フルクトースの過剰摂取と相関する肥満症やメタボリックシンドローム、フルクトース不耐症などの代謝障害の病因の理解や新たな治療法の開発に必要不可欠である。報告者は、フルクトースの代謝に重要な役割を担う酵素であるAldolaseのフルクトース代謝の役割とその破綻に伴う代謝障害の分子機構を生化学的、分子生物学的手法により解明することを目的とする。 昨年度までに、Aldolase欠損マウスのフルクトース非存在下における肥満・2型糖尿病に関連した代謝表現型や肝臓中の遺伝子や代謝産物の変化を解析した。その結果、Aldolase欠損マウスは血中のインスリン値には変化がないものの耐糖能は良好になることを見出した。これは、過食によって糖尿病・肥満の症状を呈するob/obの遺伝的背景を導入したマウスでも同様であった。 本年度は、まずAldolase欠損マウスを使用して、フルクトース非存在下におけるマイクロアレイ解析を行った。その結果、ノックアウトマウスの肝臓では肝障害が認められるともに、小胞体ストレスに関連した遺伝子発現の亢進していた。培養細胞レベルでも確認すべく、初代培養肝細胞に高濃度のフルクトース処理を行ったところ同様の結果が認められた。この時、フルクトースに応答してAldolase自身の発現増加も確認された。つまり、本研究より生体では過剰なフルクトースを摂取することで小胞体ストレスが惹起され、肝障害やそれに伴う代謝障害が起こること。そして、その調節にはAldolaseが重要な役割を担うと考えられた。
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