研究課題/領域番号 |
19K20205
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
蟹江 秀星 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (10828304)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 化学発光 / 糖尿病 / 糖代謝産物 |
研究実績の概要 |
日本国内には生活習慣の乱れにより発症する2型糖尿病の患者が1000万人いると推計されている。2型糖尿病の恐ろしさとして、重症化すると様々な合併症を引き起こし、患者とその家族の生活の質の低下につながることがある。膨大な数の2型糖尿病患者の重症化を効率よく防ぐ方法の一つは、2型糖尿病の重症化の予測に資する糖代謝産物の体内量を指標として重症化リスクの高い患者を見極め、その予防策をとることである。しかしながら、臨床レベルでの利用に十分適した、ターゲットとなる糖代謝産物の簡便な定量法は確立されていない。そこで本研究課題では、維持管理も含めて容易に取り扱える機器により検出できる化学発光という現象を利用した、ターゲットとする糖代謝産物の簡便な定量法の基盤構築を目指し、研究を進めている。2020年度は前年度に得られた結果をもとにし、毒性や危険性の低い溶媒・試薬を用いた条件のもと、糖尿病重症化の予測に資する濃度域において、ターゲットとする糖代謝産物の発光定量を実現する簡便合成可能な化合物を検討した。 具体的には、前年度に見出していた化合物(ターゲットとする糖代謝産物との反応により中性の水溶液中で化学発光する反応生成物を与える化合物)に蛍光特性を有する構造を付与することで、糖尿病重症化予測に資する濃度域の糖代謝産物の定量的な発光検出が可能となるかを検証した。蛍光特性を有する構造を付与した化合物とターゲットとする糖代謝産物との反応生成物は、構造修飾をしていない化合物との反応によって得られた反応生成物よりも強く発光した。しかしながら、目的の濃度域での定量性向上に十分な発光増強ではなかった。また、種々のタンパク質を用いた方法でのターゲットとする糖代謝産物との反応生成物の発光増強も検討したものの、定量性の課題克服に至る結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
食品や模擬生体サンプルを用いた定量手法の検証の段階に到達しておらず、さらなる検討が必要な状況であるため。 研究実績の概要に記載した通り、本研究の目的の達成にはさらなる条件検討が必要であると考えている。しかしながら研究を進める過程で、バイオマーカーとしても注目されているヒト由来のα1酸性糖タンパク質依存的にウミホタルルシフェリンが発光するという興味深い現象を見出すことができており、論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度まではターゲットとする糖代謝産物との反応生成物そのものの発光反応にのみ着目してきたが、長年利用されている生物発光システムや化学発光システムの発光阻害や発光増強という視点での発光定量法も検討する。それにより、ターゲットとする糖代謝産物の検出感度だけでなく検出選択性の向上も目指す。その後、目的とする濃度域での定量性が問題のない精度に達し次第、食品や模擬生体サンプルを用いて定量手法を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況を鑑み、研究期間を2021年度まで延長したため。次年度使用額は社会情勢を踏まえながら、試薬などの消耗品の調達費用もしくは研究成果発表のための費用にあてる予定である。
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