日本国内には生活習慣の乱れにより発症する2型糖尿病の患者が1000万人いると推計されている。2型糖尿病の恐ろしさとして、重症化すると様々な合併症を引き起こし、患者とその家族の生活の質の低下につながることがあげられる。膨大な数の2型糖尿病患者の重症化を効率よく防ぐ方法の一つとして、2型糖尿病の重症化の予測に資する糖代謝産物の体内量を指標に重症化リスクの高い患者を見極め、重症化予防策をとるという方法が考えられる。しかしながら、臨床レベルでの利用に十分適した、ターゲットとなる糖代謝産物の簡便定量法は確立されていない。そこで本研究課題では、維持管理も含めて容易に取り扱える機器により検出できる化学発光という現象を利用した、ターゲットとする糖代謝産物の簡便定量法の基盤構築を目指し、研究に取り組んだ。 2021年度は前年度に得られた結果をもとにし、糖尿病重症化の予測に資する濃度域でのターゲットとする糖代謝産物の発光定量を実現する化学発光物質への誘導体化物質、そして生物発光や化学発光の発光阻害や発光増強という視点でのターゲットとする糖代謝産物の発光定量法の検討を行った。ターゲットとする糖代謝産物と反応し生成する化学発光物質に加えて蛍光物質も生成する誘導体化物質を用いることで、蛍光物質を生成しない誘導体化物質を用いた場合よりも強い発光がみられるという結果を得た。しかしながら、目的濃度域でのターゲットとする糖代謝産物の定量性向上にはつながらず、生物発光や化学発光の発光阻害や発光増強を利用した有望な定量手法の確立にも至らなかった。その一方で、本研究過程で見出した、炎症性バイオマーカーであるα1-酸性糖タンパク質(hAGP)存在下でのウミホタルルシフェリンの発光現象に関して、その現象を応用することでヒト血清中のhAGPを発光量から簡便定量できる可能性を示す結果を得た。
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