研究実績の概要 |
食物繊維の習慣的な摂取によって主観的な食欲やエネルギー摂取量、体重が変化することは報告されているが、肥満を惹起する食欲以外の食行動(食嗜好、食の規則性、摂食開始・停止の制御など)への影響や、それらの関連に介在しているメカニズムについては明らかとなっていない。そこで本研究の目的は、食物繊維の一種であるイヌリンの摂取が食行動・食欲にどのような影響を与えるかを検討することとした。その介在メカニズムとして腸内細菌に着目し、イヌリンの摂取による腸内細菌組成の変化についても検討した。 26名を対象に、イヌリン粉末あるいはプラセボを6週間摂取する介入研究を実施し、介入の前後で次に示す指標を評価した。(1)食に関連する視覚的注意バイアス(課題の正答率、反応時間、試行条件間の反応時間の差等)(2)習慣的な食行動(質問票)(3)イヌリンを単回摂取した際の呼気中水素濃度、メタン濃度(4)摂食調節に関連するホルモン(レプチン、グレリン、ペプチドYY等)(5)腸内細菌組成(6)糞便中短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸)濃度等を評価した。 質問票(Three-Factor Eating Questionnaire)で評価した食行動の3つの尺度(Cognitive restraint, uncontrolled eating,emotional eating)や血中のレプチン、グレリン、PYY濃度に関して、介入による変化は認められなかった。また、糞便中の短鎖脂肪酸濃度も介入による変化は認められなかった。腸内細菌に関しては、Bifidobacterium属やCoprococcus属が介入によって変化を示した。いくつかの腸内細菌に変化は見られたが、食欲調節に関連するホルモンの血中濃度や習慣的な食行動には介入による効果が認められなかった。
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