各頂点が"意見"を保持しているようなネットワーク(グラフ)を考える.各頂点は予め与えられたルールに従って,近傍頂点の意見を参考に自分の意見を更新することを繰り返す.最終的にシステム全体で1種類の意見へと収束することを目標とし,その収束時間,また収束状態に関する研究を推進してきた.本年度の進展は主に以下の2点となる. (1) これまである意見を参考にした頂点は,その頂点の意見を直接採用するというモデルを扱ってきたが,現実社会ではその頂点の意見を「段階的に」あるいは「部分的に」採択するケースが多いと推察される.その点を考慮したモデルを考案し,その理論解析を行った.論文投稿中である. (2) これまで意見の種類数は主に2種類のものを主とし解析を行ってきたが,一般にk種類ある場合の解析技法が進展をみた.この設定は既存研究において主に完全グラフ上で積極的に研究が進んできたが,その場合でもタイトな上界は知られておらず,解析が困難であることが知られている.そのより簡素な解析技法を構築し,論文投稿準備中である. (3) これまで1種類の意見へ収束する時間(合意時間)に着目し研究を進めてきたが,逆に複数種類の意見がなんらかの均衡状態で収束するモデルとそれを実現するルールに関しての研究が進展した.具体的には,"多様性"を実現するモデルとして,任意の3種類の意見分布から開始し,それぞれが均等な個数付近へ速やかに収束した後その状態へ留まり続ける局所的なルールを考案,その性質を実験的に保証した.その解析も完成しつつあり,今後の進展が大きく期待される.
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