研究課題/領域番号 |
19K20223
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
森山 卓 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (30823190)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ノンパラメトリック推測 / 極値統計 / 標本最大値 / カーネル型推定 / 確率分布推定 / 漸近理論 |
研究実績の概要 |
2019年度はノンパラメトリック推測に関する理論研究及びその数値実験を中心に行った.ノンパラメトリック推測とは,柔軟かつ高度な統計モデリングを行うことであり,ビッグデータが得られるようになった現代において注目が高まっている統計分析手法である.本年度は「標本最大値の高精度確率分布推定とその応用」のための基礎研究として,ノンパラメトリック推測におけるカーネル型推定の性質に関する重要な2つの研究を行った.1つ目はカーネル型推定におけるempirical transformationの研究,2つ目はカーネル型推定と境界バイアスに関する研究である.これらに関する研究成果をまとめた論文をそれぞれ国際誌へ投稿したところ,1編は今年度中に採択,出版された.さらなる論文投稿を目指し,関連する研究を同時に進めている状況にある.また極値統計学との複合領域における標本最大値の確率分布推定に関する理論研究を並行して進めており,その統計的性質の解明を行っているところである.具体的には極値統計の理論に基づき,特定の条件下におけるパラメトリックなフィッティングモデルの推測精度を明らかにした.母集団分布としては,裾の重いすなわち標本最大値のリスクの大きいHall 型分布族や Weibull 型分布族を当面は想定している.なお年度末の諸学会開催中止に伴い,学術発表は2件に留まったが,他の研究者からのレビューを受けることができた.本研究成果に関する学術論文も来年度以降の投稿を目指している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の鍵となるカーネル型推定の重要な性質を明らかにしながら,標本最大値の確率分布推定に関する研究を並行して進めてきた.その結果「研究実績の概要」の通り,2019年度はそれぞれ一定以上の成果を得た.それらの成果として今年度は2編の論文を投稿し,そのうち1編が既に採択されている.年度末の諸学会開催中止に伴い,いくつかの口頭発表の機会を逃したが,2019年度の研究への影響は軽微なものであった.以上のことから,本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きノンパラメトリック推測に関する統計的性質を明らかにしながら,来年度は標本最大値のカーネル型分布推定に関して研究を行う.具体的には独立に重い裾を持つ同一分布に従う確率変数列に対し,カーネル型推定が良い推定精度となるための理論的条件を明らかにする.同時にパラメトリックなフィッティング精度の解明対象範囲を拡大していく.このように2020年度は特定の条件下におけるパラメトリック・ノンパラメトリックな両手法の理論的精度を明らかにし,数値実験により検証を行う予定である.得られた知見に基づき,両アプローチの利点を併せ持つような推定方法の確立を2021年度以降検討する予定である.また研究成果のレビューを受けつつ社会へ研究成果を還元すべく,研究学会等での講演を引き続き行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の諸学会開催中止に伴い,予定していた出張のいくつかが急遽中止となり,次年度使用額が生じた.研究レビューを受けると共に,研究成果を社会へ還元する為の出張講演の必要性が予定より高まった.このため,次年度使用額は「旅費」及び学会参加費としての「その他」として使用する予定である.
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