処置の割り当てにランダム化を用いない臨床研究では,交絡が生じる可能性が高い.そのため,因果効果(平均処置効果)を推定する際,交絡を調整する必要がある.交絡の調整法として,近年,傾向スコア法がよく用いられるようになってきている.傾向スコアは未知であるため,モデルを用いて推定することが多い.傾向スコアモデルには,交絡因子と結果のみに関連する変数(結果予測因子)を含めることが推奨されている.しかし,限定的な状況な評価結果に基づいているため,この結果の一般化は難しいと考えられる.そこで,本研究課題では,傾向スコアモデルに含めるべき変数の重要度について,より詳細な検討を行う.さらに,その結果に基づき,傾向スコアモデルに交絡因子と結果予測因子を含めることができる変数選択法と頑健な平均処置効果の推定法について検討する. 2019年度の実績を述べる.傾向スコアモデルに含めるべき変数の重要度について,先行研究よりも一般的な状況を想定し,数値実験により評価した.その結果,先行研究の結果と同様に,交絡因子に加え,結果予測因子を傾向スコアモデルに含めることで平均処置効果の推定量の分散が小さくなると結論付けた.傾向スコアモデルをOutcome-Adaptive Lasso,結果回帰モデルをAdaptive Lassoにより推定する,平均処置効果の二重頑健推定量を構築し,その性能を数値実験により評価した.さらに,傾向スコアモデル推定法としてOutcome-Adaptive Bridgeを提案した. 2020年度の実績を述べる.提案した二重頑健推定法の性能をさらに詳しく調べるために,様々な条件を設定し,数値実験により評価した.Outcome-Adaptive Bridgeの性能を数値実験により評価した. 2021年度の実績を述べる.提案した二重頑健推定法の成果を論文にまとめ,学術雑誌に投稿した.
|