研究課題/領域番号 |
19K20231
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
PHAM THONG 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 特別研究員 (30803530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ネットワーク分析 / 複雑ネットワーク / 動的ネットワーク / 優先的選択関数 / 適応度 / 推移性 |
研究実績の概要 |
ユーチューブフォロワーや論文共著等のネットワークの動的特徴を分析するのによく使われているのは,確率アクター・ベース・モデルという動的ネットワークモデルである.このモデルを適用するために,ネットワークの成長過程といった動的情報が必要とされるが,実際ではこの情報を観測できない場合が多い.その場合、動的特徴を止むを得ず無視し,ネットワークを何らかの静的モデルで分析するのが現状である.本研究は,動的情報なしのネットワークに対して,動的特徴を表す成長機構を推定できる方法論を構築し,動的ネットワークモデルと静的ネットワークモデルを繋ぎ合わせることでネットワーク分析における新しいパラダイムの確立を目指している. 本年度では次の成果が得られた. (1) 動的情報ありのネットワークにおける優先的選択と適応度の成長機構を推定する統計的手法をソフトウェアーに実装し,そのソフトウェアーを共著者ネットワーク分析に応用して,その有効性を確認した. (2)動的情報ありのネットワークに対して優先的選択と推移性を同時に推定できる統計的方法を提案した.その手法を共著者ネットワークに応用したところ,これらの成長機構を同時に考慮することでネットワークの構造的特徴を従来法よりよく説明できることが分かった. (3)動的情報なしのネットワークに対して優先的選択関数の推定方法を提案し,様々な実データセットでその方法の有効性を示した.数値実験と理論によって十分大きなスナップショートには優先的選択関数に関する情報がある程度保存されることが分かったので,適切なパラメトリック関数型を仮定すれば一つのスナップショートからでもその情報を抽出でき,優先的選択関数を推定できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はおおむね当初計画どおり成果がでている.動的情報ありのデータに関する方法論の研究は当初の期待を超える成果が得られている.動的情報なしのデータに関する方法論の研究は計画通りに進んでいる.諸提案手法を発展させるために,様々な実データで検討を行い,予備的結果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は共著者ネットワーク分析等の応用をさらに進める.このような応用における知見が,統計的方法論のさらなる発展につながるように,検討を行う.具体的にエッジの独立性等,今までよく仮定されている非現実的な条件を効率的に緩和し,より現実的なモデリングを可能にする手法を構築する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の末に新型コロナウイルスのせいで参加する予定だったいくつかの国内外の会議が中止になったので、次年度使用額が生じた。 今年度の助成金は、引き続き出張の旅費と計算資源の増強に当てる予定である。
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