本年度では次の成果が得られた. (1)動的情報なしのネットワークにおける優先的選択関数の推定方法に関する研究成果をまとめた論文が國際誌に掲載された。本論文は既存手法に対してある種の選択バイアスの存在を指摘し、そのバイアスを修正することによって今までに分析できなかった実ネットワークデータが分析できるようになることを示した。その選択バイアスは複雑ネットワークのみならず、一般的な統計的推測問題にも潜める可能性があるので、本研究の応用が期待できる。 (2)共著ネットワーク等のネットワークに対してハイパーグラフ成長モデルを提案する論文が國際誌に掲載された。通常のモデルはエッジの独立性を仮定しているが、クラスター性の高いソーシャルネットワーク等ではエッジの集合が一緒に登場することがよくあるので、従来モデルではその従属性が失われ、クラスター性を再現できないと思われる。本論文はその問題点を改善し、実データで従来モデルよりもスラスター性をよく再現したことを示した。 (3) 優先的選択と適応度のモデルにおけるボース=アインシュタイン凝縮の新たな条件を提案した。優先的選択と適応度を組み合わせしたモデルでは、エッジが極端に一つのノードに集中するというボース=アインシュタイン凝縮が存在する。多くの既存研究ではこの現象は固定の優先的選択関数の仮定の下で研究されてきたが、本研究では可変な優先的選択関数を考え、優先的選択の度合いによって相転移の境界の変化を明らかにした。これらの結果をまとめた論文を國際誌に投稿する準備をしている。
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