次世代のメモリシステムとして,高バンド幅積層メモリモジュールと大容量外部メモリモジュールを併用した複合型メインメモリが注目されている.一方で,複合型メインメモリでは,2つのモジュールに分けて保存されるデータをアプリケーションの実行状況に合わせてどう管理するかが性能向上や低消費電力化への課題となる.このことから,複合型メインメモリが将来主流になることを見据え,高効率なデータ管理方式を実現することを目的とし,研究を遂行してきた. 本年度は,異なるレイテンシ・バンド幅で接続されたメモリシステムを持つ現実のプロセッサにおいて,データ配置がアプリケーション性能にどのような影響を与えるか調査を行った.このような構成を持つプロセッサは,メモリ上のデータ配置によってデータアクセス性能が変わるため,将来的には複合型メインメモリと類似したデータ管理が必要になると考えられる.具体的にはA64FXを題材とし,データ配置とメモリ性能の関係を,メモリ指向カーネルアプリケーションを用いて評価した.評価より,理想的でないデータ配置の場合はメモリ性能が54%程度まで低下することを明らかにした.以上から,複合型メインメモリが現実に供された場合においても,適切なデータ配置を行う事が重要ある事が示唆された. また,発展的な内容として,新たに複合型メインメモリ向けのキャッシュメモリ用データ管理の初期検討を開始した.キャッシュメモリは,現代のメモリシステムにおいてレイテンシを隠蔽する重要な役割を担っている.しかし,これまでのキャッシュメモリのデータ管理は,メモリシステムがデータによって異なるレイテンシでアクセスされることを前提としていない.そこで,複合型メインメモリに対応したキャッシュメモリのデータ管理方式の検討を行った.現在,検討を継続しており,本課題終了後も継続する予定である
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