本研究ではMOSトランジスタの製造ばらつきを利用したアナログ回路の設計手法を提案する.そのために,アナログとディジタルの協調によるオンチップ上の自動キャリブレーション技術を提案する.2021年度は前年度に試作した温度センサのICチップの詳細な評価を行い,論文発表と論文誌への論文投稿を行った.温度センサにおいて大量の微細トランジスタのサブスレッショルド電流をオンチップで測定する回路についてSSDMにて発表を行い,JJAPの論文誌に論文を掲載した.そして,0度から100度の範囲において±1.5度以内の誤差で温度センシングができ,電源電圧依存性が極めて少なく世界トップの性能を実チップにより確認できた.提案した温度センサ方式について国内の研究会にて発表し,IEEEの国際学会A-SSCCにて発表を行った.次に,フラッシュ型ADCを搭載したチップを今年度に新たに試作し,高速フラッシュ型アナログーディジタル変換回路(ADC)の測定評価を行った.フラッシュ型ADC回路について微細プロセスに実装できる方式を開発し,トランジスタのサイジングにより性能が向上することを実測により評価した.コンパレータ郡を複数用意することにより同じ消費電力の元で線形性とSNRが大幅向上できるを実測により検証した.提案手法についてIEEEの国際学会であるNEWCASに論文が採択され,今後の6月に発表を行う.さらに,提案手法をIEICEの論文誌に投稿し,採択がすでに決まっている.以上より,これまで問題視されていた製造ばらつきを逆に利用する方式を採用することによりアナログ回路にも微細化が可能であることを実チップにて証明することができて大きな一歩となった.
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