本研究はプロセッサの高性能化と高セキュリティ化を両立することを目的とする。中でもアウトオブオーダプロセッサにおける投機実行に存在する脆弱性を狙った攻撃に対とし、その命令パイプラインにおける振る舞いのモデル化を通して対策を行う。当該年度は過年度実施したプロセッサシミュレータでの攻撃再やそのメカニズムのモデル化を受け、ハードウェアレベルでの対策を検討した。具体的には、分岐予測に関する脆弱性を利用した攻撃であるspectreの再現プログラムを用い、プロセッサシミュレータで実行したトレースに含まれる攻撃メカニズムの成功箇所を特定した。また、ソフトウェアにおける攻撃に対する対策手法を実装し、それを実装した場合の性能への影響をシミュレータ上で実行すること可視化した。これにより、ソフトウェアにおける対策のオーバヘッドが明らかになり、ハードウェアレベルでの対策とのオーバヘッド比較を行なった。 また、高性能化のためのアクセラレータとCPUの連携についても取り組み、対外発表を行った。アプリケーションを構成する主要機能をハードウェア実装することで、命令の実行数を大きく減少できるため、マイクロアーキテクチャ攻撃の可能性を大きく減らすことができる。また、高性能アクセラレータとして実装することで高性能をも実現できる。特に、ソフトウェアを元にパイプライン化された専用アクセラレータを構成する技術について検討を進めており、高セキュリティ化の際に犠牲となる性能を補うためにも必要な技術である。これらの取り組みにより、高性能化と高セキュリティ化の双方を実現する方策を検討した。
|