研究課題/領域番号 |
19K20236
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
三宅 庸資 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 研究職員 (60793403)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 温度センサ / 電圧センサ / デジタルセンサ / リングオシレータ / LSIテスト / VLSI設計技術 / ディペンダブル・コンピューティング / NBTI劣化 |
研究実績の概要 |
VLSIはチップ内の温度や電圧により性能が変動するため,チップの発熱状況や電圧変動の監視を,電力制御や性能最適化によるシステムの高性能化・高信頼化に利活用できる.センサをフィールド上で長期間運用し続けるためには,劣化現象への対策が必要不可欠である.特に最先端VLSIでは経年劣化に起因する故障の増加が懸念されている.しかしながら,従来センサの多くは劣化現象への対策が施されていない.本研究では,VLSIにおける劣化影響を低減可能なデジタル温度電圧センサ技術の開発を目的とし,劣化が生じた場合でもセンサの測定精度を維持する技術について研究を行い,長期運用可能なデジタル温度電圧センサ技術の確立を目指す.研究の目的を達成するために,2019年度は下記の項目に関する研究開発を実施した. (1)耐劣化構造を有するセンサの開発:温度電圧センサに用いる耐NBTI劣化構造を有するRO(Ring Oscillator: リング発振器)などの設計開発を行い,これまでに開発してきた制御構造なども含めたセンサの試作チップ設計を65nmCMOSテクノロジを用いて行った. (2)劣化シミュレーション環境の構築と評価:ROを用いたセンサに対する劣化評価を実施するため,Synopsys社の回路シミュレータHSPICEに搭載されている信頼性解析機能を用いた劣化シミュレーション環境の構築と評価を実施した. (3)センサにおける劣化影響の低減手法の開発:センサとして用いる耐NBTI劣化構造のROに関して,温度や電圧の測定精度向上を実現可能なROの組み合わせを体系的に選択する手法について開発を行った. 現在までに,(1)と(2)および(3)の一部を完了させ,国内研究会やLSIテスト関係の国際会議等で成果発表を行った.また,企業と共同で本提案課題のセンサ技術の実用化に向けた検討などが進められている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)耐劣化構造を有するセンサの開発については,耐NBTI劣化構造を有するROを考案し,65nmCMOSテクノロジを用いた試作チップを設計した. (2)劣化シミュレーション環境の構築については,(1)で設計したROを含めた様々な構成のROを実装して評価を行うことで,ROが構成によって劣化度合いが異なることを確認している. (3)劣化影響の低減手法の開発についても,センサに用いる耐NBTI劣化構造ROの組み合わせを体系的に選択する手法について開発を行い,(1)の試作チップに搭載している. これらの内容は成果を研究会や国際会議等で発表するなど順調に研究を進めており、全体としておおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として、これまでの(1)耐劣化構造を有するセンサの開発や(2)劣化シミュレーション環境の構築と評価に引き続き,下記の(3)センサにおける劣化影響の低減手法の開発や(4)試作チップを用いた劣化加速試験評価の項目について研究を推進していく. (3)センサにおける劣化影響の低減手法の開発:回路に生じる劣化現象は回避することができないため,RO間の周波数変化の差を用いた温度電圧測定手法を考案し,劣化が生じた場合でもセンサの測定精度を維持する手法を開発する.劣化影響低減手法と耐劣化構造と合わせることで,全体で劣化影響を更に低減させることを目標とする. (4)試作チップを用いた劣化加速試験評価:項目(1)で開発した耐劣化構造を有するセンサの試作チップを用いて,開発センサの実チップ評価を実施する.小型卓上テスタと恒温槽(小型環境試験器)を用いて,実際にチップの温度と電圧を変化させた際のセンサの測定精度等を評価する.さらに,チップを高温高電圧の環境で動作させ続け,チップを意図的に劣化させる劣化加速試験評価を実施する.劣化加速試験により開発センサに搭載した耐劣化構造の有効性を検証するとともに,劣化がセンサの測定精度にどう影響するのかの評価や,提案する劣化影響低減手法の有効性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末(2020年3月)に研究発表のための国内出張旅費として計画していたが,新型コロナウイルスの影響により研究会の中止が相次いだため,次年度使用額として繰り越すこととなった.使用計画としては,研究発表のための国内出張旅費として使用する予定である.
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