本研究の目的は、個人情報漏洩防止とプライバシー保護の対策として、データの暗号化を考慮した遠隔医療・遠隔ヘルスケアシステムを対象に、安全な遠隔監視とファイル共有の仕組みを構築・実現することである。本年度は、主にユーザのプライバシー強化を考慮し、提案システムに対してヘルスケア機器のデータ暗号化に加え、データ登録、更新、同期、照会などの通信路の暗号化を実施した。近年、インターネットユーザのプライバシー保護が注目されており、名前解決におけるユーザプライバシー保護を目的としたDNS over TLS (DoT)やDNS over HTTPS (DoH)など通信路の暗号化方式がIETFにより標準化された。また、本来計画していた大規模ネットワークでの性能評価実験は新型コロナ禍の影響により、実験環境の検討及び構築に支障が出たため、IETFの標準化動向に応じてユーザのプライバシー強化へ方針変更を行った。具体的には、ホームネットワーク内におけるデータベースへのヘルスケア機器のデータ登録と更新、外部ネットワーク(インターネット)におけるクライアントからのヘルスケア機器のデータ照会、またホームネットワーク内のデータベースと外部ネットワーク(インターネット)のデータベース間のデータ同期の際の通信路の暗号化を実施した。これにより、ヘルスケア機器のデータの暗号化だけでなく、通信路の暗号化を加えることにより、ユーザのプライバシー漏洩防止がより期待できるようになった。ヘルスケア機器のデータ種類に関しては、まずテクストデータのみ対応し、今後バイナリデータへの対応を実施する予定である。また、上記の通信路の暗号化拡張に関して国内研究会に投稿し、発表する予定である。
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