モバイルトラヒックの飛躍的な増大を背景として、セルラー網やWiFiなど多種多様な無線システムを連携して利用する異種無線統合システムの実現が望まれている。しかし、周波数帯や通信方式が異なり無線環境が時空間的に変化する中で、適切な無線システムを選択し、動画像通信の品質を保証する手法は未だ確立されていない。そこで本研究は、ユーザ参加型センシングと体感品質学習を用いた無線システム選択手法を検討する。ユーザ端末をセンサーとして利用することで無線環境情報と通信品質情報を収集、多次元の観測情報を基に仮想的に構築された電脳空間上で各ユーザの体感品質を満足できる無線システムを決定する。ユーザ視点での体感品質を保証しつつ、無線オペレータ視点での周波数利用効率を最大化する革新的な無線プラットフォームを確立する。 知的異種無線統合システムの実現に向けて、課題1:通信品質の多次元相関に基づく体感品質評価手法に取り組んだ。特に、商用無線システムではブラックボックスである無線区間における通信品質を推定する手法について検討した。具体的には、ユーザ端末が観測可能なE2Eの通信品質とユーザ端末-無線基地局間の電波強度を学習することで、無線環境の劣化を起因としたE2E通信品質の変動パターンを認識する方法について検討した。課題2:体感品質に基づく異種無線システム選択手法の確立では、エッジサーバを介した自動車の遠隔監視において、超解像技術を用いることにより体感品質が悪い無線通信路においても高画質な映像を伝送できることを確認した。本年度の成果の一部は国際会議チュートリアル2件、国内学会2件、国内依頼講演2件で発表している。
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