研究課題/領域番号 |
19K20261
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
森 慎太郎 福岡大学, 工学部, 助教 (90734913)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コンテンツ指向ネットワーク / 無線センサネットワーク / ブロックチェーン / セキュアキャッシング |
研究実績の概要 |
コンテンツ指向型ネットワーク(ICN)を無線センサネットワーク(WSN)に導入する際に必要不可欠なキャッシング手法に対し、本研究開発ではブロックチェーンに基づく新たなセキュアなフレームワークを開発することを目的とし、令和2年度はキャッシングデータの取り扱い方および合意形成に貢献したノードに対するインセンティブ手法に焦点を当てた。令和元年度において明らかになったWSNに適合する新たなブロック認証手法の青写真と基礎評価を受けて、令和2年度の成果は詳細なプロトコル設計と実現性について検証した。これはテストベッドによる実機評価を成功させるために必要不可欠なプロセスである。提案手法のブロック認証手続きにおいては、PoC(Proof-of-Consensus)方式を採用している。PoCおけるブロック認証手続きはValidatorと呼ばれる認証された検証ノードの大多数の承認によってブロックが検証されたとみなす。とくに、提案手法では小型無人航空機(UAV; Unmanned Aerial Vehicle)をデータ収集者としてだけではなく、Validatorとしての役割も持っている点に特徴がある。そのため、UAV間のアドホック・マルチホップ無線ネットワークにおける通常のデータ転送中の過程で、ブロック認証を可能とする利点がある。そのため、提案手法は従来のマイニングによるブロック認証処理に見られる多量の計算機資源を必要としない。また、ビットコインのリワードやイーサリアムのガスに相当するブロック認証に必要な取引手数料の交換の機構も不要であるため、合意形成に貢献したノードに対するインセンティブ機構を導入することなくブロックチェーンの構築を可能とする。そのため、当初計画において合意形成の場面においてインセンティブ機構は必須であると考えていたが、提案手法はそれを省略できる仕組みを実現している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗に関しては当初の予定通りに進められている。令和2年度はCOVID-19の影響により国際会議や国内学会の現地開催が中止されているが、オンライン開催の学会での議論により、幅広い専門家の意見を受けられるようにすることで研究開発の進捗を維持してきた。感染症拡大の状況によって行動が制限されることもあったが、自宅等のテレワーク環境下でも実施可能であるプロトコル設計や実現可能性の見通しを立てる箇所などを中心に研究開発を実施することにより、そのような影響を最小限に抑えるように努めた。また、令和2年度末において感染症拡大の状況が少し落ち着いてきたタイミングにおいて、感染症対策を十分に行ったうえで、提案手法の適用先の検討(討論)やフィールドワークを通じて解析に必要な実データ(生データ)の収集も試みた。これは、令和3年度以降に考えているハードウェア実験に先立ち、基礎解析のためのサンプルデータとして利用する予定である。今後も世界的パンデミックな感染状況に対する収束の見通しが立たない状況ではあるが、令和3年度については、令和2年度にひき続き机上で検討可能な部分を中心に研究活動を行い、研究開発期間の後半で実施することを検討しているハードウェア実験に備えた準備についてもタイミングを見計らって行ってゆく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の研究によって洗い出された課題として、1)提案手法を支えるFANET(Flying Ad-hoc Network)の設計、2)UAVとSN(Sensor Node)の無線システムの設計、3)センシングデータの取り扱い方法の3点について研究開発をすすめる予定である。1)は提案手法をFANETに適用できるように設計することは、ブロック認証において重要な要件である。UAVとSNの間の無線通信環境として、多量のセンサノードが生成するデータをどのように捌くかという視点で、2)において多重化、帯域、コリジョン、干渉について検討する必要がある。また、令和元年度において指摘された課題のなかで、提案手法の適用シナリオを設定する必要があり、令和2年度においてスマートシティにおける環境モニタリングをケーススタディとして想定して設計してきた。そのようなソリューションにおいては、テキストベースの少量データにとどまらず、動画像のセンシングデータの取り扱いも要求される点も明らかになった。本研究開発ではハードウェア実験を通じた実装に係る問題点の洗い出しと解決を試みることも重要なテーマであるため、3)においてフィールドワークを通じて得られた実データに対する適用可能性についても検討も積極的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費として521千円を繰り越した理由は、感染症拡大の影響により国際会議や国内研究会がオンライン開催または中止になったからである。令和3年度以降、情勢が落ち着いてきた際には現地開催の学会参加のための旅費として利用する予定である。人件費として86千円を繰り越した理由は、令和2年度の成果をとりまとめた英文論文誌の英文校閲費として計上していたが、投稿のタイミングにより年度をこえたためである。なお、令和3年4月において、当該論文は執筆済み、かつ英文校閲を行いその決済のために予算を使用している。その他として37千円を繰越した理由は、IARIA ICN2021の国際会議の学会参加費として計上していたが、請求書の発行・処理が年度をこえたためである。なお、当該参加費は令和3年4月に予算を使用して支払い済みである。
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