研究課題/領域番号 |
19K20265
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
大岡 睦 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 研究員 (20816152)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 情報指向ネットワーク / ICN / CCN / キャッシュ / 経路制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、情報指向ネットワーク(ICN)を活用した高効率なネットワーク実現のための、高品位動画のオンデマンド配信(VOD)に適した高効率なキャッシュおよび経路の協調制御方式(ネットワークキャッシュエンジニアリング;NCE)の確立に向けて、キャッシュ制御アルゴリズムの研究を行う一方で、実ネットワーク環境における実証実験を見据え、主にCeforeを用いた拡張性の高い実験方式およびFPGAを用いたICNルータハードウェア実装の研究開発・発表を行った。NCEの重要な構成要素であるキャッシュ制御アルゴリズムの研究においては、ICNにおけるキャッシュとマルチキャスト、およびトランスポートプロトコルの連携を考慮した方式を検討している。しかし、リアルタイムでの実証実験のために必要な実ICNネットワーク環境構築のためには、頻繁に更新されるICN実装であるCeforeを多様な実験装置に展開して、実験用の設定を変更しながら行う必要がある。新しい技術であるICNではこのようなツールは存在しておらず、DevOpsと呼ばれる方式を応用することで、実験環境の多様性に対応しながら実験環境の構築や再設定を高速化し、Ceforeを利用した研究・実験を円滑化する方式を提案した。本研究成果は、IEICE ICN研究会にて発表を行った。また、キャッシュ協調制御のためにはネットワーク中のキャッシュ状況を取得する必要があるが、標準化が検討されている既存のICN情報取得方式では制御に必要な詳細なキャッシュ状況を取得することができず、そのため、要求経路外のキャッシュ情報の取得やコンテンツを構成するチャンク単位での詳細情報を取得可能な方式としてccninfoの標準化およびツール開発に取り組み、IETFにおいて標準化活動に取り組むと共に、同ハッカソンに参加してツール開発や意見交換、開発技術の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ICNを活用した高効率なネットワーク実現のためのVoDに適したNCE研究のためには、ICNにおけるリアルタイムストリーミングに向けた現実的な検証および評価が可能な環境が必要とされたため、3年目に計画していた実環境における評価方式の確立を優先して行った。IEICE ICN研究会において発表した実験の円滑化方式に加えて、提案方式の実機検証のための準備として数10Gbpsの速度でICN通信を実現可能なハードウェアルータの設計・実装を進めている。これらの成果によって、1年目に計画していたキャッシュ・経路の制御アルゴリズムの実験を行った上で研究成果を発表する必要があるため、制御アルゴリズムに関する提案方式の研究・発表はやや遅れている一方で、実証実験のために必要な研究は計画以上に進展しているため、全体としてはおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において研究開発した実証実験環境および技術を活用して、次年度はキャッシュ・経路の制御アルゴリズム提案方式の研究を進める。当初の予定通り、キャッシュ戦略としては、従来のキャッシュヒット率・ホップ削減率・消費メモリ量等だけでなく、スループット安定化・高速化のために、適切なキャッシュチャンク数の管理とコンテンツ配置に加えて、VoDに対して有効なICNの機能の一つであるマルチキャスト技術にも焦点を当てて研究する。また、経路上に無い近隣ノードのキャッシュ利活用には、キャッシュ状況に応じたリアルタイムな経路制御戦略が必要である。制御においては、静的なトポロジー情報だけではなく、リンク負荷・キャッシュ状況・要求状況等の動的な情報から、最適な戦略を決定すべきである。初年度に研究した実験方式を用いて、ICN実装であるCeforeを活用した実機環境での評価を行うことで現実的な実験結果を得る。実験においてはネットワーク中のリアルタイムな情報取得のためにccninfoを活用すると共に、実験から得られた知見をccninfoの標準化活動においても活用していく。以上の研究によって、適切なキャッシュチャンク数の管理とコンテンツ配置を模索し、スループット安定化・高速化を実現する高品位動画VODに適した方式の研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた旅費(国内)に関して、COVID-19の影響によってIEICE総合大会(3月開催)がリモート開催となり、出張旅費の仕様を見送ったため、次年度使用が生じた。次年度の試用見込みは約130万円となり、FPGA購入および国内外旅費として下記の通り遂行する予定である。 【物品費】実験用FPGA(90万円)、【旅費】国外(40万円)
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備考 |
(1)はICN研究会にて発表した「CeforeとDevOpsツール連携」に関する成果。 (2)はccninfo標準化活動におけるIETFハッカソンにおけるプロジェクト発表成果。
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