本研究プロジェクトは、量子アルゴリズムを活用することで耐量子計算機暗号の安全性解析を行うものであり、本プロジェクトのメインテーマとその周辺テーマにおいて画期的な成果を得た。 本研究のメインテーマとして、シンドローム復号問題を解く量子アルゴリズムで使用する量子ビット数を削減した。シンドローム復号問題は、符号暗号の安全性の根拠となる数学的問題であり、符号暗号はNISTの標準化候補の最終候補に入っている方式が複数あるなど注目されている耐量子計算機暗号である。そのため、シンドローム復号問題を効率的に解くアルゴリズムを構成することは大きな意義がある。耐量子性を考慮に、これまでシンドローム復号問題を解く様々な量子アルゴリズムが提案されてきたが、高速化のためには指数的に大きな量子ビット数が必要となっていた。量子コンピュータでは大きな量子ビット数を搭載するのは物理的に困難であろうと考えられているため、なるべく計算速度を落とさずに量子ビット数を削減することは重要な課題である。本研究では、既存のアルゴリズムより必ずしも速いわけではないが、量子ビット数が制限されているときには最も高速なアルゴリズムを提案した。本研究成果は査読付き国際会議ACISP 2023で発表済みである。 関連テーマとして、量子アルゴリズムによる離散対数問題アルゴリズムの効率化を行った。離散対数問題を解く量子アルゴリズムにはGCD法とFLT法のいずれかがあり、GCD法の方が量子ビット数が圧倒的に少ないことが知られていた。本研究では、FLT法の量子ビット数を大幅に削減することに成功した。本成果は査読付き国際会議ACNS 2024で発表済みである。
|