研究課題/領域番号 |
19K20272
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研究機関 | 北海道情報大学 |
研究代表者 |
福光 正幸 北海道情報大学, 情報メディア学部, 准教授 (10736119)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 格子署名 / マルチ署名 / Fiat-Shamir変換 / ランダムオラクルモデル / プログラミング性 |
研究実績の概要 |
2019年度・2020年度の計画段階では,「耐量子性(量子コンピュータからの攻撃に耐えうること)」と「圧縮可能性(膨大な署名データ量を縮小できること)」を満たすベースの署名技術を開発し,安全性・性能を評価することと,また,その開発から一般的な構成法を探求することであった. これに対し,2019年度は,実際に,ベースの署名技術として,格子ベースのマルチ署名を開発した.この開発は,El Bansarkhani・Sturmによって開発された格子ベースのマルチ署名技術を改良することで実現した。特に,この署名技術は,「緊密な安全性」と呼ばれる望ましい安全性を持つことを解明できた.さらに,この署名技術の量子コンピュータからの安全性を評価するため,量子ランダムオラクルモデルと呼ばれる耐量子性を満たす署名技術の安全性を署名する際に一般的に用いられるセキュリティモデルでの安全性分析を行うことができた.なお,ベース方式をさらに発展させるため,NIST(米国標準技術研究所)による耐量子暗号標準化の候補とされている署名技術との関係性についても調査している。 一方,El Bansarkhani・Sturmの署名技術は,「Fiat-Shamir変換」と呼ばれる署名技術を実現するための方法を基にしているため,このFiat-Shamir変換による署名技術の安全性の証明方法について解明する必要があった.そのため,本研究では,この種の署名の安全性を証明する際に,上述のランダムオラクルモデルにおいて,「プログラミング性」と呼ばれる性質が安全性を証明する際に,必要であることを示唆する結果を得ることができた. なお,これら研究成果については,国内・国際会議にて公表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,耐量子性と圧縮可能性を実現できるベースの署名技術を開発に成功し,また,耐量子性の安全性の証明に適したセキュリティモデルでの分析にも着手できた.さらに,この種の署名技術の安全性の証明の際に,必要となりうる性質についても解明でき,安全な署名技術の開発を促進する証拠を得ることができた.しかし,開発の署名技術を安全に運用するための具体的なパラメータについての解析や,一般的な構成法については,議論できていないため,以上のように結論付けた.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,2019年度に構成したベースのマルチ署名技術の構成を分析し,耐量子暗号標準化の候補とされている署名技術との関係性を解明することで, この候補の署名技術のマルチ署名化を行う。次いで,開発の署名技術のパラメータの解析を行う.また,これまでの知見を基に,マルチ署名技術を構成するための一般的な構成法についても議論していく.さらに,耐量子性を満たす集約署名の開発についても着手していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由として,2019年度予定していた,国際会議への出席ができなくなってしまったこと,また,署名技術の開発のうち,実機による性能評価に至らなかったことが挙げられる. そのため,2020年度の予算に加え,残金については,国際会議等に出席するための旅費や,性能評価のための研究補助のための人件費としたいと考えている。
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