研究課題/領域番号 |
19K20273
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
廣瀬 幸 東京電機大学, 未来科学部, 助教 (80804541)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 物理層セキュリティ / 認証方式 / 電波伝搬 |
研究実績の概要 |
ネットワーク接続台数の増加による,IPアドレス管理や認証の負荷は,セキュリティ品質を下げている.そこで本課題では,OSI参照モデルの物理層に着目し,無線LANおよびBluetoothにおけるセキュアな物理層における認証方式の開発を目指す. 初年度では,シミュレーションを用いて,物理層認証方式の設計・開発および評価をし,簡易な開発環境を構築した.認証方式は,電波伝搬特性と伝送特性を利用した鍵共有方式を採用した.これは電波伝搬における多重波環境の特性を利用した鍵共有技術で通信路の可逆性に基づいている.ある空間おける特定の2点の受信時の電波伝搬特性は,同じ周波数で同じ時間に送信すれば同一特性となる.このとき,別の場所では干渉現象により異なる電波伝搬特性となり,特定の2点の電波伝搬特性を推定することは難しくなる.この特性を基に秘密鍵を生成することで鍵共有が可能となる. 認証方式の設計として,まずシミュレータによりIEEE802.11 a/b/n/ac/axの物理層を構築し,無線環境における電波伝搬特性および伝送特性から提案方式による鍵生成の鍵一致率を計算した.鍵生成アルゴリズムは,鍵共有方式で用いられる秘密鍵の生成方法として無線LANで採用されているOFDM(orthogonal frequency-division multiplexing; 直交周波数分割多重)技術を考慮した秘密鍵共有方式を想定している. 開発環境の構築は,プログラマブルなFPGAを搭載した無線機にIEEE802.11の物理層と開発した鍵生成アルゴリズムを実装するための環境整備に注力した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,物理層における電波伝搬特性を利用する認証方式開発のため,電波伝搬特性のシミュレーション評価と開発環境を構築した. 本研究で次の4点の研究課題を掲げている;1) 無線LANにおける電波伝搬および伝送特性を利用した認証方式,2) 省電力デバイス向けのセキュアな認証方式,3) 提案方式(秘密鍵生成)のシミュレーション評価,4) 提案方式の実装および実験的評価.初年度では当初の予定通り,1)の認証方式の検討として,まずシミュレータでIEEE802.11 a/b/n/ac/axの物理層を構築し,無線環境における電波伝搬特性から提案方式による鍵生成アルゴリズムを検討した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度では,引き続き鍵生成アルゴリズムの設計をするとともに,プログラマブルなFPGAを実装した無線機を利用した開発環境を構築する.無線機は,送受信機とも複数アンテナで構成したMIMO(multiple-input and multiple-output)技術を取り入れた実験環境を構築する.無線機に鍵生成アルゴリズムを実装し,電波伝搬特性や鍵一致率を評価する.さらにその結果を鍵生成アルゴリズムにフィードバックしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) 年度末に実験機器の購入と学会発表の旅費として計上していたが,当初予定より認証方式の設計に時間を費やしたため,機器購入と学会発表を次年度に繰り越した. (使用計画) 研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め当初予定通りの計画を進めていく.未使用額は実験機器の購入と旅費に充てることにする.
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