本研究では計測された時系列データのデータ間の動的な関係性を定量化し背景のシステムの理解を深めるために、非線形状態空間再構成を用いた解析手法によりデータ間の動的な関係性を定量化する手法を開発し、定量化した関係性から動的ネットワークを構築する。また、これらの解析ワークフローとインタラクティブな可視化技術を結び付けてユーザー理解を促進することで、生態学や神経科学等の自然科学分野知見創出のための動的ネットワーク分析のための可視化システムの構築を目指す。R5年度の実績としては、R4年度までに作成した、Empirical Dynamic Modeling(EDM)と可視化技術を組み合わせて実現した、動的ネットワークの状態と遷移の解釈を支援する可視化分析システムについて、状態空間上でのデータ特徴を多人数で観察するためのVR(Virtual Reality)可視化システムのプロトタイプを作成した。特に視覚的分析のための多人数協働作業を可能とするため、サーバクライアントの環境を構築した。開発したプロトタイプを用いるとEDMで分析した動的ネットワークの結果をVR上で複数人で探索でき、状態の遷移の特徴分析やデータ解釈における議論を促進することができる。これらの取り組みをR6年2-3月の国際ワークショップ(Manifolds in Nature)で口頭発表した他、日本シミュレーション学会誌への特集号記事を執筆し成果公表を行った。以上の最終年度の成果を踏まえ、目標としてきた動的ネットワーク分析のための可視化システムのプロトタイプの作成や改良、そしてその適応を通じて、生態学分野や神経科学分野における知見創出に資することが確認された。これらの成果の主要な部分は論文誌IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphicsに発表した。
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