研究課題/領域番号 |
19K20286
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
椋木 大地 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (90742289)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高精度 / 再現性 / 行列計算 / 疎行列反復法 |
研究実績の概要 |
本研究では,スーパーコンピュータ等の超並列アーキテクチャを対象に,計算精度の高精度化と,計算結果の再現性を保証可能で,かつ従来手法と比べて高性能を達成可能な,基本線形代数演算ライブラリ(いわゆるBasic Linear Algebra Subprograms, BLAS)の開発を行う.本研究では次の4つの手法:(1)尾崎スキーム,(2)ExBLASスキーム,(3)DotKスキーム,(4)CADNAスキームに着目し,この中で(1)を主たる手法として検討する.2020年度の進捗は以下の通りである.(a) 昨年度に国際会議ISC2020に論文が採択された,尾崎スキームに基づくTensor Coresを活用したDGEMM実装に関する研究の口頭発表を行い,論文が出版された.同内容については国際会議CSE21においても口頭発表を行なった.(b) ISC2020の提案手法の電力性能を評価し,これに関して共著者として執筆に参加した論文が国際会議IPDPS2021(会議は来年度開催)に採択された.(c) ISC2020の提案手法を応用したbinary128(IEEE 4倍精度)行列積を開発し,日本応用数理学会2020年度年会において口頭発表した.本成果は現在論文を執筆中であり,次年度に査読付き国際会議へ投稿予定である.(d) 昨年度に開発を開始した尾崎スキームに基づく高精度かつ再現性のある疎行列反復解法(CG法)に関する論文を国際会議HPC Asia2021に投稿し採択され,口頭発表を実施し,論文が出版された.この研究ではExBLASスキームに基づく同等の実装との性能比較を実施した.(e)昨年度に共著者として執筆に参加し国際ワークショップNSV20に投稿したCADNAスキームに関する論文が採択され出版された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画と予定の前後や多少の変更はあるが,前述の実績を踏まえると総じて十分な進捗があると言える.
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今後の研究の推進方策 |
来年度に重点的に取り組む内容は以下の通りである:(a) 尾崎スキームの分散並列版(MPI)実装と性能評価.(b) 複数精度・混合精度対応実装の開発と,他手法との比較を含めた性能評価.(c) 高精度かつ再現性のある疎行列反復解法の改良.Binary128またはDotKもしくはdouble-double演算の活用による高精度化と,混合精度化による高速化を検討する.CADNAスキームの活用による誤差分析結果の混合精度化への応用も検討する.(d) アプリケーションへの応用.本研究で開発された技術の実アプリケーションにおけるデモンストレーションを検討中である.
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid19感染拡大により学会発表,打ち合わせ等に要する出張が取りやめとなったことに加え,学会もオンライン開催となり参加費が減額されたため,使用額が減少した.
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