研究課題
医用画像を対象とした多くのコンピュータ支援診断技術において「人体の統計モデル」,すなわち個体間での臓器形状やテクスチャの「空間的」ばらつきを説明する数理モデルが不可欠である.しかしながら,ヒト胚子や小児など,発生や成長を伴う対象を扱う場合,それらの時間的変化が無視できない.本研究では,特定の時点での「空間的」変動だけでなく,各個体が「時間的」にどのように変化するかを説明可能な「時空間統計モデル」の構築法の開発および診断支援への応用を目的とする.成果の概要は以下のとおりである。①時空間統計モデル構築手法の開発(2019年度):3次元の肝臓形状とCT画像における肺野テクスチャそれぞれに対して,深層学習に基づいた生成モデルを提案し,従来の生成モデルよりも優れていることを明らかにした.また,ランドマークの発生に対応可能な,ヒト胚子の点群に対する時空間統計モデル構築法を提案した.②時空間統計モデルの応用(2020年度):時空間統計モデルの画像セグメンテーションへの応用に取り組んだ.具体的には,臓器セグメンテーション用のニューラルネットワークの学習において,時空間統計形状モデル(日齢を条件とする条件付き統計形状モデル)を用いた正則化手法を提案し,その有用性を実証した.その他,時空間統計解析技術を応用し,ヒトの胎児期の顔面骨格に対する3次元形態解析にも貢献した.③評価用データセットの構築(2019~2020年度):国際小児病院(米国)の協力のもとで,高解像度かつ縦断的に撮影された小児の時系列MR画像を収集し,肝臓領域の正解ラベルを作成した.時刻間での非線形画像位置合わせを用いた半自動セグメンテーションによる作業の効率化を図り,全被検者に対する肝臓の正解ラベルの作成を完了した.これにより,時空間統計モデルの「経時変化の予測モデル」としての性能を定量的に評価する準備が整った.
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Scientific Reports
巻: 11 ページ: 6867
10.1038/s41598-021-85543-5