研究課題/領域番号 |
19K20298
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研究機関 | 秋田公立美術大学 |
研究代表者 |
阿迪里江 依米提 秋田公立美術大学, 大学院, 助手 (10726938)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アワビ漁 / 漁獲支援システム / スマート水産業 / 深層学習 / パターン認識 / 知覚情報処理 |
研究実績の概要 |
本課題の目的は,アワビ漁を事例対象として,負荷が小さい漁獲作業と効率的的な資源管理を両立させるシステムの実現により,これまで箱メガネを通して行ってきた漁獲法の代わりになる,新たな漁獲法の提案である.初年度は当初の予定通り,基本機能から構成されるプロトタイプの開発に主として取り込んだ.アワビ漁に利用させるのは小型の漁船が一般的であり,軽量で持ち運びが容易なシステムの開発が求められる.そこで,簡易に船への取り付けと取り外し可能な装置を製作し,モバイルバッテリーで駆動可能な省電力の小型コンピュータを活用した海底撮影システムを開発した.漁獲時に海底の様子を確認するための映像出力デバイスにヘッドマウントディスプレイ(HMD)を採用した.これは,長時間中腰姿勢で箱メガネから海底を覗きながらの作業から解放するためである.また,本システムと無線通信が可能にするため,WiFiアクセスポイントとして機能を追加した.これによりHMDの代わりにスマートフォンやタブレットからも本システムに接続できて,海底様子の確認とシステムの制御を可能にした.各デバイスや接続部分に確実な防水対策を施した.さらに,海水温度の測定ユニットと撮影位置を記録可能なGPSユニットを追加することで,海底画像の撮影と同時にこれらの情報も記録できるようにした.アワビ判別に関しては,深層学習を用いた海底画像からアワビの認識手法を提案し,精度向上の可能性を確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に提案していたシステムを構成する基本機能をそれぞれ開発してプロトタイプを完成させた.具体的には,予定より早く防水対策を確立し,簡易に取り付けができ軽量で持ち運びが可能な海底撮影システムを開発した.海水温度の測定と作業位置の記録機能を海底画像の撮影と同期させて,捕獲場所の水温と位置,そして漁獲した海底様子の画像を持続可能な資源管理に利用できるように記録可能にした.当時は進化的アルゴリズムを用いたアワビ認識手法の提案を予定していたため,選定したアルゴリズムの問題点を洗い出し,収束性能を改善し,その成果をジャーナル論文として発表した.アワビ認識において畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が有利であることが確認できたため,CNNを用いたアワビ認識手法を提案し,その成果を国内会議で発表した. 上記の理由から,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,予定通りプロトタイプシステムに対して改善を行い,主としてアワビ認識アルゴリズムの性能向上のための改善と,上記の小型コンピュータでディープラーニング推論アクセラレータを採用したリアルタイム認識を目標とし,システム全体の統合と検証を実施する.CNNによる認識手法において,学習と評価に大量正解データが必要であるため,正解データセットの補完作業も継続しつつ,精度検証に基づく認識アルゴリズムの洗練化を行う.また,漁獲時に記録される採捕位置,海水温度,磯環境の画像などを持続可能な資源管理に適したデータ管理システムを構築して,システム全体の完成度を高めていく.研究成果を順次に学会発表やWEBページにより発信していく.
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