本研究は,ウニやサザエなどと比較して発見されにくい生態を持つアワビ漁を事例対象に,負荷が小さい漁獲作業と効率的な資源管理を両立させるシステムを開発することで、箱メガネを用いて行ってきた漁獲法の代わりとなる新たな磯根漁法の提案を最終目標とする。令和2年度は,予定通りにプロトタイプシステムの各機能に対して改善を行うことと同時に、各機能を統合して、クロスプラットフォームで実行可能なアプリケーションを開発した。このアプリケーションを小型コンピュータに実装し、アワビ漁に利用させる小型の漁船に簡単に取り付け、持ち運びが容易な漁獲システムとしてとりまとめた。 開発したアプリケーションからコンピュータに接続中のカメラ、GPSデバイスと温度計を制御可能にし、アワビを漁獲した時に、ワンクリックで採捕位置,海水温度,磯環境の画像などを一括で保存できるようにした。これらのデータを持続可能な資源管理のために利用できるように関連づけて、時系列で漁獲した環境を確認できるような記録方法にした。また、船に取り付けたカメラと竿に取り付けたカメラの撮影画面を、ヘッドマウントディスプレイで確認しながら簡易に切り替えることができるようにしており、箱メガネの代わりに用いることで漁獲に使用可能なシステムとして完成させた。また、撮影画像からのアワビ認識に関しては、前年度提案した認識モデルの代わりに、小型コンピュータでも実行可能な深層学習手法を採用し,海底画像からアワビを認識する手法を提案した。
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