本研究では,計算機により音楽におけるメロディを扱うための分散表現の獲得を目標として,二年度目までの第一研究フェーズでは,メロディのベクトル化を実現した.その後,三年度目以降の第二研究フェーズ以降ではメロディベクトルを使ったアプリケーションに関する研究を実施してきた. 最終年度である四年度目には,メロディの対象を一般的な12平均律に限定しない,微分音に対する処理の実現を目指し,そのデータ表現手法,メロディ入力手法などの実現に取り組んだ.特に,従来の音楽における一般的な音律の範囲に縛られずに,あらゆる音を含むデータから音律を作成し,メロディを作ることができるインタフェースを開発し,国際会議SMC2022でその成果を発表した. また,これまでの研究成果をより身近なものとして享受可能なものとすることを目的として,開発したシステムをDAWソフトウェア(コンピュータ上で音楽を制作するためのソフトウェア)上で動作するVSTプラグインとして実装した.その成果の一部はオープンソースソフトウェアとして誰もが参照可能な形で公開している. 研究機関全体を通して,これまでに,大規模なメロディデータを対象とした機械学習によるメロディのベクトル化の実現と,それを応用して様々な角度から音楽創作支援インタフェースを実現してきた.実装したインタフェースは,メロディの検索を実現するもの,作成途中のメロディの後続音符/フレーズを提示するもの,12平均律外の自由な音律のメロディの打ち込みを支援するものなどである.
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