研究課題/領域番号 |
19K20314
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山岡 潤一 慶應義塾大学, メディアデザイン研究科(日吉), 講師 (60838697)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | デジタルファブリケーション / ヒューマンコンピュータインタラクション / マテリアル / インタラクティブメディア / メディアアート |
研究実績の概要 |
個々人に適した物品を多品種少量生産可能な新しいデジタルなものづくり環境として、3Dプリンタなどのデジタルファブリケーション技術が研究開発されている。しかし現在普及している3Dプリンタ技術は多くの造形時間を要することや素材が繰り返し使用できない課題がある。そこで本研究課題では、デジタルファブリケーションにおける立体造形の高速化を目指し、粘土状の素材を変形させて立体物を造形する高速造形手法の開発を進めている。 今年度は、提案手法の基礎検討として実験と開発を行った。具体的には、低融点樹脂と鉄粉を混ぜた変形可能な磁性樹脂の開発およびリニアアクチュエータと磁石を用いた磁性樹脂の制御装置の開発である。また制御装置用のソフトウェアも実装を行い、いくつかの成形可能な形の検証を行った。この成果をまとめ、SIGGRAPH2020 Posterに採録され、発表した。 さらに、粘土状の導電性素材を用いた柔軟な入出力インタフェースへの応用にも取り組んだ。また入力だけではなく、出力として、粘土内部にアクチュエータを内蔵して、粘土の形状を自由に変形できる手法についても取り組んだ。これらの成果は、WISS2020にて発表を行った。 来年度以降は、今年度の成果を元に、さらなる高速化や精度の向上の実現のために開発を進める。またデジタルファブリケーション技術を利用することで、自動的にデバイスを製造する手法についても検討し、知育玩具としての応用については、製品化にも取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究代表者は、デジタルファブリケーションにおける立体造形の高速化を目指し、粘土状の素材を変形させて立体物を造形する高速造形手法の開発を進めている。今年度は、昨年度行った基礎検討を元に、低融点樹脂と鉄粉を混ぜた変形可能な磁性樹脂の開発およびリニアアクチュエータと磁石を用いた磁性樹脂の制御装置の開発を行った。この成果をまとめ、SIGGRAPH2020 Posterに採録され、発表した。ラピッドプロトタイピングの可能性を広げるといったコメントや、他の代替可能な素材を提案してもらうなど、多くのフィードバックを得ることができた。 さらに、粘土状の導電性素材を用いた柔軟な入出力インタフェースへの応用にも取り組んだ。具体的には、導電性素材の抵抗値を計測して、粘土の形状を認識して、情報の操作や新しい演奏方法などに応用できる手法を開発した。また入力だけではなく、出力として、粘土内部にアクチュエータを内蔵して、粘土の形状を自由に変形できる手法についても取り組んだ。これらの成果は、WISS2020にて発表を行った。インタフェースのみならず知育玩具やパフォーマンス利用への可能性を提案して頂いたり、効率的に形状を認識できるアルゴリズム手法を教示してもらうなど、多くのフィードバックを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、今年度の成果を元に、さらなる高速化や精度の向上の実現のために開発を進める。具体的には、アクチュエータの改善や持ち運び可能のために小型化を目指す。またデジタルファブリケーション技術を利用することで、自動的にデバイスを製造する手法についても検討する。知育玩具としての応用については、製品化にも取り組み社会実装を目指す。さらには、研究のみならずアート領域の作品として展示することも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、遠隔環境での研究開発によって、当初の計画から変更があった。採録された国際会議がオンライン開催であったため、海外での展示発表が実現せず、旅費に関する予算計画に変更が伴った。また開発に必要な費用に関しても、物理的に研究室で研究を遂行する回数が減り、在宅で行う実験が多くなったため変更が生じた。この状況は少しずつ改善されているものの、依然遠隔環境による研究は並行して進めながら、次年度は研究成果をまとめるフェーズに移行する。そのため、次年度は映像に記録したり、論文を執筆するなどのアーカイブ作業を行う。また社会実装に向けて、キットにするなどの量産化を視野に入れながら予算を使用することを計画している。
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