研究課題/領域番号 |
19K20322
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
伝保 昭彦 成蹊大学, 理工学部, 助教 (70807817)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 拡張現実 / 両眼提示・単眼提示 / 事象関連電位 / フランカー課題 / オドボール課題 |
研究実績の概要 |
本研究においては、近年浸透しつつある情報提供技術の拡張現実(Augmented reality: AR)について、人間の視覚情報処理過程を検討するための実験を行った。先行研究ではARによる像(AR像)を両眼または単眼に提示した場合、単眼に提示すると現実世界の観察を妨害しにくくなり、作業成績が向上することが示されてきた。これは単眼提示においてはAR像が提示されていない方の目によって現実世界だけを観察できるためであると考えられる。しかし、このような仮定は先行研究のデータを整合的に説明できるものの、実際に単眼条件においてAR像が提示されている方の目の情報が無視されているのかは明らかではなかった。 そこで、本研究ではフランカー課題とオドボール課題を組み合わせた課題を行っている際の事象関連電位(Event-related potentials: ERP)を計測するなどし、AR像を両眼または単眼に提示する際、知覚や認知にどのような違いがあるのかを検討した。 視野の中心部の現実世界に<または>のような矢羽根記号を提示し、一方に対しボタン押しで反応し、もう一方は何もせず待機するという課題を行った。また、低確率でその視野中心部の記号の周辺に<<<<<または<<><<と見える位置関係でAR像の矢羽根刺激が提示された。実験参加者は周辺の記号は無視し、中心の記号のみに注目して反応を選択するよう教示した。AR像は両眼または単眼に提示された。 実験の結果、全体として両眼条件の方が中心の記号に対して早く反応できる一方で、周辺の記号が中心の記号と一致しない場合は単眼条件で反応が早くなることが示された。したがって、単眼条件においても周辺の記号の影響を受けていることが示され、AR像を単眼提示した場合はAR像を無視できるという仮説は支持されなかった。 この研究内容について発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの感染状況の急激な変化により、データ取得を行うための時期調整が困難であったため、必要なデータを取得することができなかった。そのため、本年度はこれまでのデータの発表に注力することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究テーマに関わる刺激について作成し、実験参加者を募ってデータを取得する予定である。可能であれば、複数の実験刺激を用いて条件の異なる状況での拡張現実使用時における人間の視覚情報処理特性について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染状況の変化が激しかったため、実験参加者を大規模に募ってデータを取得することが難しく、人件費の支出がなかった。また、国際学会への参加も困難であり、旅費なども発生しなかった。 本年においては人材派遣会社を用いて実験参加者募集を行ったり、研究成果発表を行ったりするために研究費を使用する予定である。
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