注意力散漫な状態で運転する漫然運転は人的事故要因の約半数を占めており,注意散漫状態を正確かつ高速に検出することは交通事故の防止やQOLの向上につながる.また近年では注意散漫状態下における注意喚起システムについても研究されており,注意喚起方法によっては交感神経に影響を与え心拍数が増加すると報告がある.そこで本研究では,脳血流や眼球運動などの時系列データを用いた注意散漫状態の早期検出システムを開発し,覚醒状態から注意散漫状態に至るまでの時系列データを明らかにする.さらに視覚閾下刺激を用いた無意識下の注意喚起システムを用いて,ターゲット提示による正答率変化の解析までを目的としている. これまでの研究により多チャンネルで酸素化ヘモグロビン信号/脱酸素化ヘモグロビン信号を計測可能な脳血流計測システムを開発し,より詳細な前頭部の信号計測を可能にしている.今年度は持続的注意課題遂行中の時系列解析を進め,複数のチャンネルにおいて持続的注意課題に失敗する直前において酸素化ヘモグロビン信号が変化することを確認している.また持続的注意課題中に閾下にてターゲットの数字を提示した場合の正答率変化を解析しており,わずかに正答率が上昇する結果を得た. 持続的注意課題の刺激提示間隔を調整することで,被験者に与える刺激間隔の長さがfNIRS信号の動態や正答率にどのような影響を与えるか検討した.結果として,課題の刺激間隔に依存した酸素化ヘモグロビン信号や正答率の変化は確認されず,刺激間隔1秒のものと同程度であった.
|