研究課題/領域番号 |
19K20326
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研究機関 | 公立諏訪東京理科大学 |
研究代表者 |
山口 一弘 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 講師 (90649063)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ホログラフィ / CGH / 無線伝送システム |
研究実績の概要 |
3D表示方式の1つである計算機合成ホログラム(CGH: Computer Generated Hologram)では,ホログラフィと同様に自然な立体視を実現可能であり,かつ,高い臨場感を持つため,将来の3D表示技術として注目されている.本研究では,フルカラーCGHの計算(撮影・記録),無線伝送,表示を組み合わせたシステムを開発し,伝送エラーによる画質劣化の影響のないフルカラーCGH無線伝送システムの開発を目的とする.CGHの無線伝送時に発生する伝送エラーが与える画質劣化の影響をシミュレーションおよび光学再生実験により解明し,フルカラー3次元動画像のストリーミング再生を実現する. これを実現するために,「1. 伝送エラーによる光波分布の理論的解析を行い,モノクロ再生時,フルカラー再生時における伝送エラーをモデル化し,CGH自身の劣化,劣化したCGHから再生される光波に生じるノイズの光学的特性を明らかにする.」,「2. シミュレーション再生・光学再生による実験を通じて,伝送エラーによって再生像にあらわれるノイズを定量的に評価し,再生像に生じる ノイズの光学的特性を実験的に明らかにする.」,「3. CGH計算・伝送・表示を統合したCGH無線伝送システムの開発を行う. を研究し,CGHの計算から伝送,表示まで,伝送エラーによる画質劣化の影響のないフルカラーCGH無線伝送の実現性を明らかにする.」について実施する. 本年度は,1の理論的解析を重点的に実施した.解析のための計算装置,計算アルゴリズムを開発を行うとともに,2年目以降に実施する光学再生のための表示装置の開発を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(1年目)では,伝送エラーによるノイズの理論的解析を目的に研究を進め,具体的には下記の項目を実施した. ・フルカラーCGHの無線伝送時における伝送エラーによる影響を解析するために,フルカラーCGHの無線伝送をモデル化し,伝送エラーとCGH自身および劣化したCGHから再生される光波との関係性を理論的に明らかにする.・また,理論的に導出した3次元空間中の光波分布と,1年目に開発する計算装置を用いてシミュレーションした伝送後の光波分布を比較評価する.・具体的には,無線伝送時の通信品質や伝送エラー率をパラメータとして,CGH自身および劣化したCGHから再生される光波分布を客観的に評価する. また,これらの項目を実施するための計算装置・計算アルゴリズムの開発を行い,伝送エラーによる影響の理論的解析を進めた.また,2年目以降に使用する表示装置の開発を行った.計算装置・表示装置では,一部機材のモデルチェンジに伴った製造メーカの供給不足により調達遅れが生じているが,主要な機材は調達済みであること,次年度早期に調達の見込みであることから,当初の予定通り概ね順調に進行している.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,2年目では,シミュレーションおよび光学再生により画質劣化の実験的解析を行う.1年目で開発したフルカラーCGH計算装置を用いてCGHデータを計算し,同じく1年目に開発したフルカラーCGH表示装置を用いて再生像を表示する.2年目では理想状態の環境下としてフルカラーCGHの無線伝送を行い,シミュレーション再生によるシミュレーション再生像と光学再生による光学再生像を用いて,1年目に実 施した理論的解析時のデータをもとに比較評価を行う.2年目では画質劣化の評価を中心に行い,通信品質と伝送エラー率の観点から客観評価 ・主観評価を行う予定である. また,1年目に開発した計算装置・表示装置の調達できなかった機材を早期に調達し,2年目の実施項目に影響のでないよう取り組む予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
計算装置の開発にあたり,当初調達予定の製品のモデルチェンジ・製造メーカによる供給不足が生じたため,一部の機材について次年度に調達することになった.また,今後の無線伝送に使用する機器もあわせて調達予定であったが,こちらもちょうどモデルチェンジのタイミングであり,この標準化の動向により,一部機材を次年度に調達することにした. なお,これらの調達遅れは一部の機材のみであり,主要な機材は当初の計画通りに調達・開発を行った.
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