研究課題/領域番号 |
19K20328
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
金成 慧 宇都宮大学, 工学部, 助教 (40813770)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視運動性眼振 / 視覚的注意 / 瞳孔反応 / 自閉症スペクトラム |
研究実績の概要 |
本研究は視運動性眼振(optokinetic nystagmus; OKN)と呼ばれる眼球運動を用いて,人の視覚的注意位置が推定可能かどうか明らかにすることを目的としている.昨年度までの研究から,OKNによってシフト注意位置の明るさと対応して,瞳孔が変化することが明らかになった.このことから,OKN機構と瞳孔調整機構が密接に関連することが示唆された.そこで,今年度は注意が切り替わるときに,OKNと瞳孔反応がどのように時間的に変化するか検討した.その結果,OKNの緩徐相速度を基準とした注意の切り替わりと同時に,瞳孔が瞬時に変化することが明らかになった.この成果から,OKNと瞳孔を計測することで,注意の切り替わるタイミングを瞬時に推定できることが示唆される.また,単純な刺激を観察した場合でも,OKNには個人差があることが知られている.そこで,個人差として眼球運動障害があると言われている自閉症スペクトラムにおける度合いとOKNの特性との関連を検討した.その結果,OKNのゲイン(OKNの緩徐相速度/刺激運動速度)と自閉症スペクトラム傾向の間に負の相関が見られた.一方,OKNの急速相成分と自閉症スペクトラム傾向には相関が見られなかった.この成果から,OKNを測定することで,自閉症スペクトラム傾向を推定できることが示唆される.本研究の成果は,実環境における注意位置推定システムの向上に大きく貢献し,車両の事故防止や人とマシンの円滑なコミュニケーションの実現に寄与するだけでなく,個人の特性を推定するバイオマーカーの開発にも貢献が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OKNと瞳孔反応を測定することで,人の注意位置だけでなく,注意を切り替えたタイミングも推定できることを明らかにした.そのため,人の注意状態をさらに詳細に推定できる可能性が高くなったため,順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
OKNが個人の自閉症スペクトラム傾向を推定できることを明らかにしたため,今後はさらに眼球運動・瞳孔反応の個人差の原因を明らかにすることで,汎用性のある装置の開発を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度から所属が変わり,実験室の環境を新しく構築していたため,物品の購入はなかった.また,COVID-19により,学会発表がオンラインとなり,旅費の使用が減った.次年度は研究計画の実験で使用する物品の購入や研究成果を発表するための,英文校正,論文掲載費として使用する.
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