研究課題
当初の計画通り、2020年度は統計学習生成系の動的過程の詳しい解析および実データとの照合に基づく検証を行った。まず実データの解析では、西洋クラシック音楽、日本と米国のポピュラー音楽、アイリッシュ音楽などのデータを用いた解析を行った。創作物の内容特徴量の類似度に基づくクラスタリングに基づく解析では、多くの場合に、各クラスターの頻度変化曲線が共通した形を持つこと、クラスターの時間遷移が断絶平衡の構造を持つこと、クラスター内の特徴量変化の大きさはクラスター間の距離に比べ小さいこと、そしてこれにより音楽創作物の特徴量の時間変化を予測するにはクラスター構造を組み入れたモデルがより適していることを示した。また各創作物内の音楽要素の頻度のデータセット内での分布は、多くの場合ベータ分布に従い、その時間変化はベータ分布を保つ形の適応度関数により近似されることを示した。各創作物中のその他の統計量のデータセット内での分布では、近似的にガンマ分布に従うものが見つかり、より一般的に創作物内の特徴量分布とそのデータセット内での分布が共役関係にあるという一般の統計則が示唆されることを示した。理論的には、統計モデルによる創作物の生成と統計学習による創作物特徴量の世代間伝達モデルを考えることにより、斜行伝達(親世代の平均的な特徴の伝達)がある場合に、この共役分布則が理論的に導かれることを示した。これは知能情報に関する文化進化を定量的に調べる上で、パラメトリックなモデルを選択する原理の一つとして用いることができるため、今後の研究に広く役立つ知見だと言える。この他、音楽データの定量分析のためのデータ処理法として重要である、音声データから楽譜情報を推定・抽出する自動採譜技術において、現段階で世界最高性能のピアノ採譜手法の開発に成功するなど、多くの成果があった。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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