本研究の目的は,深層学習のもつ柔軟性と汎化性能を保ちつつ,以下の問題を解決することにある.(a1) 深層生成モデルの出力分布の解析により,異常データに対する不適当な汎化を検出し,「何を知らないかを知っている深層学習」を実現する.(a2)「何を知らないかを知っている深層学習」によって学習が不十分なデータを検出し,一般的な識別問題の学習の高速化や,信頼性や解釈性の向上を含む広い意味での高性能化を実現する.(b1) 構造化深層生成モデルを提案することで新しいデータグループの異常検知(zero-shot 異常検知) を実現する.(b2) 構造化深層生成モデルを一般化し,代表的な異常を検出しやすいモデル構造を提案する.(c) 構造化深層生成モデルを用いたデータのモデル化をより一般的なモデル化手法として提案する.
(c)として,構造化深層生成モデルの高度化・汎用化に取り組み,特に強化学習における世界モデル(world-model)に用いることができることを明らかにした.また(b2)として,これまでは変分自己符号化器(VAE)を主に扱っていたのに対し,その成果を拡散モデルに応用し,医療データのように背景との境界が曖昧なデータにおける異常検知の精度向上を達成した.またこれまでに得られた(b1)の成果を敵対的生成ネットワーク(GAN)に応用し,学習済みモデルからの意味の抽出を高度に行えることを示した.当初計画の目標が達成されただけでなく,発展的な成果が様々に得られたことから,進捗状況は順調である.
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