本研究では,制約付き多目的最適化問題の進化計算による解法において,解探索中に生成される解の制約条件に対する評価指標として違反した場合の違反量のみだけでなく充足した場合も制約を違反するまでの余裕を新たに制約許容量として活用することで,解探索を効率化する方法の構築を目指している.前年度までは特に制約の境界に最適解が存在する問題に注目し,探索中の解集団から各制約の違反量と許容量とのバランスを考慮し制約境界に子(解)を生成しやすくするための交配解ペアの選択法を提案し,多目的ナップザック問題での有用性が確認され,交配する親解の選択における制約許容量の活用の有効性が示された.しかし,選択された親解から新たな子を作る際にはランダム要素の強い従来の交叉法による子生成を行うため,解探索の多様性が保たれやすいが不良な解が生成される可能性も依然高い.そこで2021年度は,複数の解の制約許容量と違反量,目的関数値,設計変数の情報を用いて,それらの関係からより最適性の高い制約充足解の存在する変数空間の領域を推定して解生成する手法の構築を目指し研究を行った.手法の特性上,ここでは連続問題を対象とし,最適解の制約境界性4分類を揃えたMWテストスイートやTNK,OSYなどを用い,解探索中の目的空間における近傍解集合の目的関数値と制約許容量・違反量,設計変数の解析を行ったが,有効な子生成法の構築には至っていないため今後も継続して検討していく.
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