研究課題
本研究課題の目的はネットワーク上に生じる局在パターンの形成原理の解明である.この達成のために大規模な数値実験,および理論解析を行った.まず,葉脈の形態形成などにおいてしばしば仮定される運河仮説に類似した作用を反応拡散ネットワークに取り入れて数値実験を行った.結果,パラメータの値に依存して一様平衡状態が不安定化し,亜臨界分岐を通して系に定常な局在パターンが形成されることが確認できた.また,さらにこの定常パターンが不安定化を起こし,局在パターンがネットワーク上を伝播することが確認できた.一様平衡状態の不安定化が起こる条件は近似的な線形安定性解析により半解析的に説明できた.なお,不安定化が起こった後に局在パターンが生じるメカニズムについては,ネットワークにおけるパターン形成,および連続媒質上の局在パターン形成に関する既存理論を用いても説明できるに至っておらず,これは新奇なメカニズムに起因することが示唆される.本年度は特に数値実験を通して,局在パターンを形成し得る反応項の種類を調査した.またネットワーク上に複数の局在スポットを形成し得るようにモデルの改良を試みた.拡散係数を局所的に変化させることで複数のスポットの形成に部分的に成功したが,形成されたスポット集団は衝突時に反発することなく融合したため,十分時間が経過すると系にはスポット1つのみが残る.上記を論文にまとめ雑誌に投稿する準備をしている.
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電子情報通信学会論文誌B
巻: J105-B, 07 ページ: 535-542
10.14923/transcomj.2021JBP3039