本研究課題は,複雑,または未知のパレートフロントを有する多目的最適化問題においても効率的な探索が可能な進化型多目的最適化手法の提案を目的とする.より具体的には,解情報からパレートフロントの特徴や位置を推測し,自律適応的に探索方向の変更を行うことで重点的な探索が可能な手法の提案を行う.また,提案手法の有効性を検証するため,他の最新手法との最適化性能の定量的比較を行う.また,比較実験から提案手法の利点と欠点を明確化することで,今後の研究に関する議論と検討を行う. 2022年度は,パレートフロントの形状近似にAdaptive Resonance Theory(ART)を基にしたクラスタリング手法を適用する進化型多目的最適化手法の改良と論文化を行った(ただし,2022年度中の採録に至らなかった).本論文において,生成された解情報の関係性をクラスタリングにより抽出し,その情報を基に次世代の遺伝的操作を行うことで,より優れた最適化性能を実現可能なことを示した.また,提案手法の優位性や有用性に関する多角的な解析を通して,他の最新手法よりも様々な点で優れる多目的最適化手法であることを示した. 進化型多目的最適化手法の開発と平行して,手法の特性を解析するために,最適化過程の可視化手法の提案を行った.提案手法により,進化型多目的最適化手法の特性を定量的・定性的,かつ複数の手法を同時に比較可能となり,進化型多目的最適化手法の開発に活用可能な情報の取得が容易となった.本研究の成果により,指導学生がIEEE CIS Japan Chapter Young Researcher Awardを受賞した.
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