研究課題/領域番号 |
19K20359
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
早川 隆 日本大学, 医学部, 助教 (30756789)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニューラルネットワーク / ランダム神経回路 / 場の理論 / レザボワ計算 / 機械学習 / 統計力学 |
研究実績の概要 |
本研究課題は申請者が研究している動的均衡にある神経回路ダイナミクスを学習に用いるための方法論の確立である. 2019年度は動的均衡にある神経回路のダイナミクスに関して学習への応用のための基盤となる理論を確立した. 具体的には動的均衡にある神経回路に摂動的な入力を与えた場合の回路の振る舞いに関しての理論解析方法を確立した. 計画段階で得ていた理論結果とこの結果の一部とを併せて, 論文発表を行った. また, この理論結果のうち未発表の部分は, どのような学習方法が有効であるかについて示唆を与えており, 今後の数値シミュレーションによる実証により, 本研究課題をさらに大きく前進させると考えられた. この方向に研究をさらに進めるために, 神経回路の学習性能をシミュレーションにて実証する必要があるが, そのためには大規模な計算を実行する必要があり, そのためには大きな計算資源を必要とする. このことは当初から予想されていたため, 2019年度の早い段階から最新型のGPUを搭載したワークステーションを導入し, 数値計算環境を整えていた. このセットアップによって, 申請者がこれまで使用していた計算機環境に比しておよそ数十倍の高速処理が可能となった. 上記の統計力学的アプローチの他に, 統計的学習の観点からも神経回路ダイナミクスの解析を行い, 今後の展望を得た. 具体的には動的均衡にない神経回路についての学習理論を扱った先行研究を応用し, 理論解析を進めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通り, 基盤となる理論的結果を得ることができた. 最低限の理論的な展望は立案時からあったが, 早い段階から実際に研究課題の中核となる理論結果が得られたことは幸運であり, 当初の予定よりも順調に進んでいると言えるだろう. 一方, 計画のうち数値シミュレーションの部分については, 購入したワークステーションが当初正常に動作しなかったなどのトラブルがありやや遅れた. ただし, 数値シミュレーションに関しては, トラブルを解決済で, 本年度に重点的に行う準備が整っている. 両者を総合的に判断すると, 概ね計画通り順調に進行していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は概ね順調であり, 計画の大きな変更は必要としない. これまでの研究では, 理論的な点で計画が大きく進展し展望が得られた一方, 数値シミュレーションによる実証はまだ進んでいない. そこで, 今年度からの研究では当初計画していたよりも数値シミュレーションを重点的に行い, 理論的に得られた展望・仮説が正しいかどうかを検証していく. そして, 実証の結果を論文や会議報告の形でまとめていく. 当初計画していたように, 応用上重要な複数の問題設定で実証が必要であり, これらを並列して進めていく. また, 2019年度に行った統計的学習の観点からの解析結果も活かし, 数値シミュレーション結果をさらに理論的に補強することも狙っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は理論的な研究結果が得られたためそちらに注力していたことと, 新たに購入したワークステーションが修理や工事を必要としていたため, ワークステーション関連物品の購入を見合わせ, 次年度使用額として残した. これらの問題は2019年度中に解決したため, 2020年度は未使用額を使い数値シミュレーションに注力し, 当初の計画どおりのスピードで研究計画を進行させる予定である.
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