研究実績の概要 |
研究2年目である今年度は,凸最適化の枠組みにおいて,どのようなコスト関数を用いればより精度を向上できる可能性があるのかを検証した.昨年度提案した1次元のエッジ保存スプライン平滑化では,データ整合性,エッジを除く箇所での関数の局所変動エネルギー,エッジ数の3項の重み付き和の最小化問題を定式化した.この際,エッジ数はある種のブロックl0ノルムとして表現でき,これをブロックl1ノルムに凸緩和することで,提案手法を凸最適化の枠組みで実現することに成功していた.しかしながら,近年,l0ノルムの凸緩和として,l1ノルム以外の関数を用いる手法が研究されており,本研究でもブロックl1ノルム以外の定式化の可能性を探るために,数理的に最先端のコスト関数の有効性を検証した.具体的には,「Linearly Involved Generalized Moreau Enhanced (LiGME)モデル」を圧縮センシングMRIと組み合わせる研究を行った.圧縮センシングMRIで使われていたコスト関数(指向性全変動)をLiGMEモデルに置き換えることで,比較的大規模な凸最適化問題におけるLiGMEモデルの有効性を世界で初めて示すことに成功した.この研究成果は,来年度開催される国際会議に採択済みであり,エッジ保存スプライン平滑化への応用も期待できる. D. Kitahara, R. Kato, H. Kuroda, and A. Hirabayashi,“Multi-contrast CSMRI using common edge structures with LiGME model,”EUSIPCO 2021. また,スプライン平滑化を利用した最頻区間回帰の研究も新たに開始しており,こちらも現在研究成果を纏めている最中である.その他,スプライン関数に関する招待講演を国内会議で行った.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はまず,既に採択されている下記の国際会議での論文発表を行う.どちらの論文の研究内容もエッジ検出と深い関りを有している. H. Kuroda, D. Kitahara, and A. Hirabayashi,“A convex penalty for block-sparse signals with unknown structures,” IEEE ICASSP 2021. D. Kitahara, R. Kato, H. Kuroda, and A. Hirabayashi,“Multi-contrast CSMRI using common edge structures with LiGME model,”EUSIPCO 2021. その後,2次元データに対応したエッジ保存スプライン平滑化の開発を行う.具体的には,直方体格子上の2変数スプライン関数を用いて,2019年度に提案済みの1次元エッジ保存スプライン平滑化を2次元に拡張する.1次元エッジ保存スプライン平滑化では「データ整合性」と「関数の局所変動エネルギー」と「エッジ数」の重み付き和を最小化していたが,2次元に拡張する際には,「データ整合性」と「関数の局所変動エネルギー」を一定値以下に保つという制約の下で「エッジ数」のみを最小化する最適化問題を構築する.これにより,最適化問題を設定する際に必要なハイパーパラメータの調整が容易になると考えている.また,スプライン分位点回帰・最頻区間回帰の研究も進んでおり,これらの研究成果も順次ジャーナルに投稿していくことで,スプライン関数の応用の可能性を提示していく予定である.
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