研究課題/領域番号 |
19K20361
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北原 大地 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (20802094)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ブロックスパース信号復元 / エッジ保存スプライン平滑化 / 凸最適化 / ビームフォーミング / 最頻区間回帰 |
研究実績の概要 |
今年度はブロックスパース信号の復元問題に取り組んだ.提案しているエッジ保存スプライン平滑化では,データ整合性,エッジを除く箇所での関数の変動エネルギー,エッジ数の重み付き和の最小化問題を定式化した.この際,スプライン関数の係数を用いて,エッジ数をある種のブロックl0ノルムとして表現した.つまり,提案手法はブロックスパース信号復元の1種とも見なすことができる.今年度は,気象レーダのビームフォーミング問題において,推定対象である散乱信号が周波数領域でブロックスパース信号になることに着目した.エッジ保存スプライン平滑化のときと同様に,ブロックl1ノルムを用いた凸最適化問題を構築することで,従来の線形手法を大幅に上回る推定精度を達成することに成功した.この成果は,リモートセンシング分野のトップジャーナルである「IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing」に採録された. D. Kitahara, H. Kuroda, A. Hirabayashi, E. Yoshikawa, H. Kikuchi, and T. Ushio, "Nonlinear beamforming based on group-sparsities of periodograms for phased array weather radar," IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, vol. 60, 19 pages, Mar. 2022. また,最適なブロック分割が未知な状況にも対応できるように,ブロック分割の探索も含めたブロックスパース性の新しい評価尺度を凸関数の枠組みで提案した.この成果は,信号処理分野のトップジャーナルである「IEEE Transactions on Signal Processing」に採録された.その他,スプライン平滑化を利用した最頻区間回帰の研究も進んでおり,現在ジャーナル論文が条件付き採録の状態である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブロックスパース信号復元に関する論文がリモートセンシング分野のトップジャーナルである「IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing」と信号処理分野のトップジャーナルである「IEEE Transactions on Signal Processing」に採録された.また,音響信号処理では「深層学習による歪みエフェクタモデリング」の研究が,画像処理では「距離射影を用いた敵対的生成ネットワークによる画像超解像」の研究がそれぞれジャーナルに採録された.このように,当初予定していた以上の研究成果を続々とジャーナル論文として発表していくことができた. K. Yoshimoto, H. Kuroda, D. Kitahara, and A. Hirabayashi, "WaveNet modeling of distortion pedal using spectral features," Acoustical Science and Technology, Nov. 2021. H. Yamamoto, D. Kitahara, H. Kuroda, and A. Hirabayashi, "Image super-resolution via generative adversarial networks using metric projections onto consistent sets for low-resolution inputs," IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences, Apr. 2022 一方で,当初2021年度中に開発できると思われていた「2次元のエッジ保存スプライン平滑化」は完成しなかった.これは,1次元の場合に用いていた「エッジ数をある種のブロックl0ノルムとして表現する」テクニックがそのままでは2次元の場合には利用できないことが発覚したからである.しかしながら,この問題点を解決するためのアイディアを既に考案しており(今後の研究の推進方策を参照),2022年度中には開発が完了すると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はまず,既に採択されている下記の国際会議で論文発表を行う.この論文の内容は提案するエッジ保存スプライン平滑化のエッジ検出部分と深い関わりを有している. H. Kuroda and D. Kitahara, "Graph-structured sparse regularization via convex optimization," IEEE International Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP), Singapore, May 2022, to appear. その後,2021年度に完成しなかった2次元データに対するエッジ保存スプライン平滑化の開発を続ける.2次元の場合では,1次元の場合に用いていた「エッジ数をある種のブロックl0ノルムとして表現する」テクニックが直接は利用できないことが2021年度中に発覚した.そこで2022年度では,2変数スプライン関数を定義する直方体格子の辺に沿って各多項式を積分し,その積分値の隣接する直方体間における差分を用いてエッジ数を表現することを試みる.これにより2次元の場合でも,「エッジ数をある種のブロックl0ノルムとして表現する」ことが可能になると考えている. また,スプライン最頻区間回帰の研究も進んでおり,現在ジャーナル論文が条件付き採録の状態であるので,査読コメントに応じで論文を改定する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,2つの国際会議(ICASSP,EUSIPCO)を含む全ての学会発表がオンライン開催もしくはハイブリッド開催となり,学会発表時の旅費が無くなったため次年度使用額が生じることになった.2021年度末から複数のジャーナル論文を既に投稿しているため,これらの論文の掲載料に次年度使用額を利用する予定である.
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